2016年12月31日土曜日

2016年の読書

 今年の読了本は193冊。昨年の読了本は140冊。今年は「この一冊」を選びきれない。これは理解が浅薄であることを昨年以上に痛感し始めていることによるもので、その原因は、やはり友人達のお陰。自分の理解が、いかに浅いかということを自覚させられることしきり。というわけで、来年は冊数の目標はあえて立てずに、質的な充実を目指します。

 来年も1ヶ月10冊、120冊を量的な目標としつつ、1カ月に1冊は「これ!」という本を精読することを課題とする。だから年末には少なくとも12冊は、その内容について自信を持って語れる本ができてなくてはいけないってことになる。やっぱ読んだ本について、読んでない人にツッコまれて返答できないってのはカッコ悪いよね。

 そんな中、まぁ、今年読んで面白かったよ?と、おずおずとオススメするのが以下の5冊。

[地政学で読む世界覇権2030]
アメリカは偉大であり、でもそれはアメリカ人がエラかったからではなく、アメリカの国土が持つ地政学的な性能にのみ拠っているという、一見、トンデモな知見を、古代から現代までの文明の発展において地理が果たした役割を抽象しながら展開する本。さらには未来予想も、やっぱりアメリカだけがグレートと声高に主張している。この人にかかれば、別にトランプに頼らなくてもアメリカサイコー、ということになる。


[感情で釣られる人々]
感情が理性に負けてしまうトホホな局面に関するハウツー本かと思ったら、感情をダシに、うまく操られちゃってる我々の現状についてだった。バタイユを視野に入れながらの議論ということで、ちゃんと読まなきゃと思ったが、本書の白眉は理性的な文明人でいるための手法としてGTDを取り入れていること。その一事を以て姜尚中なんかが帯で本書を絶賛してるが、それはセンセー、ちょっと勉強不足カモです。


[リスク・リテラシーが身につく統計的思考法]
お師様からお借りした本。統計には全く弱いのだが、本書が主張するのは%が出てきたら具体的な数字に置き換えて考えるとダマサれにくくなるよということ。


[憲法の無意識]
日本人が憲法に対して無意識に持っているものは明治時代ではなくて江戸時代でしょ、という本。「先行形態」について学ばせてもらったのが大きい。また、カントの「永遠平和のために」で述べられている、ある意味恐ろしいほどの現実主義的な視点も勉強になった、とかって言わないで、原典にあたれって話か(笑)。


[ウルトラマン・デュアル]
札幌図書館一番ノリで読んだ。円谷プロのウルトラマンワールド多角化の尖兵と言える、老舗早川書房とのコラボ企画第2弾。短編集だった前作とは違い、本書は読み応えのある書き下ろし長編。

金子監督の平成ガメラが成功をおさめたのは、それが単なる怪獣パニック映画だったのではなく、自衛隊を中心に、人間社会の反応をシミュレーション的に描いて見せたのが大きな要因の一つだと言われているが、本作もそれに近い。苦悩しつつギリギリの妥結点を探る官僚達のやり取り。簡単になびく国民感情やレジスタンス。「いじめ」のメタファーでもあるヴェンダリスタ星人の地球人支配。戦闘地域を一歩でも出たら、ウルトラマンであっても自衛隊は攻撃せざるを得ないという切ないバランスゲーム。この辺りの重たい政治シミュレーションを読んでいると、脳天気なフツーのウルトラマンのストーリー展開がありがたく思えてきて戸惑った(苦笑)。ちなみに、そう考えると、やはりシン・ゴジラのバランス感覚はすごいということなのかも。ちょっと最後のカタルシスに欲求不満が残るが、最近、面白さを増してきている円谷陣営の動きを知っておくという意味でもオススメ。

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