・タイトルからすると、人を支配するためのノウハウが書かれている本かと思うが、内容としては、政治的権力者の内在的理論について分析した本。
例えば、自然災害などによる世界からの善意の義援金などは独裁国家にとっては格好のたかり対象。あえて国民を救出せず、その救出を名目に援助金を釣り上げる。この手口は開発援助でも使いまわされる。民衆に届くことはなく、援助する側も実はそのことを把握しているが、独裁者が自分たちの意向に沿う政策を取っている限り、別に構わないというスタンスだったりする。そして、そんな「援助する側」の姿勢は、我々の姿の反映でもあるってところを忘れちゃいけない。「我々は西アフリカや中東の本当の変化よりも、安い価格の原油を求めているのである。したがって我々は、リーダーが我々の希望することがらを実行しようとするのに対して、不満を言うべきではない。これはつまるところ、民主主義とはこのようなものだ、ということを示している。 (P254)」
・独裁者は、少数の「かけがえのない盟友(他にもっとしっくりくる日本語はないのかな?)」に、ケチることなくおいしい思いを保障しておくことがポイント、という基本構造が一貫して主張されている。そして、この「かけがえのない盟友」という支持基盤が少数の取り巻きというレベルではなく、多数になればなるほど、構造的に民主主義に寄っていくことになる。民主的社会であれば「独裁者」ではなく「リーダー」と呼び名が変わるが、抽象した構造は、実は似通っている。また、オリンピック委員会やFIFAなんかも「独裁者と少数の盟友」によって運営されている組織として引き合いに出されている。
・実際の独裁者のエピソードを例として解説されていて、面白く読める箇所もあるんだけど、訳が少し読みづらくて、自分にとっては読み通すのがキツかった。ちなみに、独裁者のためのルールは以下の5条だそうです。
・ルール1 盟友集団は、できるだけ小さくせよ
・ルール2 名目上の集団は、できるだけ大きくせよ
・ルール3 歳入をコントロールせよ
・ルール4 盟友には、忠誠を保つに足る分だけ見返りを与えよ
・ルール5 庶民の暮らしをよくするために、盟友の分け前をピンハネするな (P69)
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