外山滋比古と言えば「思考の整理学」などが有名で、知に関する作法を具体的な技術として工夫を重ねて築き上げてきた職人という印象がある。本書は、そんな著者が、例えば退職後にどうやって有意義な人生を送っていくかを、自らが実践してきた具体的な心がけや方法と一緒に、平易に語ってくれる本。
外山さんの文章は「上善如水」。するすると水のように入ってくるのだが、実は味わい深い。しかも、この味わいは、自分の中に受容体がないと反応できないわけで、正直なところ、「ふーん、それで?」という感じで、あまりピンと来ない箇所も多々あった。
それでも「長い老後を実りあるものにするためには、一日一日の生活パターンを守ること、外にでること、この2つは鉄則だと心得ています。」こんな一言に反応するようになったのは、自分の年齢のせいなのだろうか。他にも「男子、厨房に入るべし。そして調理は段取りを旨とすべし、です。」など、かなり具体的。ちなみに、調理の段取りは脳によいと、脳関係の他の本にも書かれていた。
タイトルに偽りはないのだけれど、読み進めてて、どうも、頑固爺さんが小言を書き連ねているような印象だった。すると著者自身があとがきで「この本はまるでシラフでクダを巻いているような趣きがあり、われながら恥ずかしい」とあった。確信犯だったんですね。ただし、やはり外山さん、お言葉のそこかしこに、きらめくものがある。
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