2015年10月18日日曜日

チョムスキーが語る戦争のからくり: ヒロシマからドローン兵器の時代まで ノーム チョムスキー (著), アンドレ ヴルチェク (著), 本橋 哲也 (翻訳)

・今年の1月に元駐シリア日本大使による「報道されない中東の真実」を読んだ時、メディアの報道偏向が仕組まれているのを垣間見たような気がしてちょっと怖かったのだけど、この本で語られている内容はもっと怖かった。我々、西側陣営の人間は偏向したプロパガンダに慣らされており、その手法は大変洗練されたものになっている。一方、西側に所属しない陣営(ソ連、中国やイスラムやキューバ、ベネズエラなど)では複数のプロパガンダが共存している。しかし、そんなことすら我々は知らない。

「(ヴルチェク)自由でオープンで民主的であると自称する西側諸国は、かつてのソヴィエト連邦や現在の中国で作られるプロパガンダにアクセスもできなければ、それに影響されることもなかった。プロパガンダだけではなくて、ほとんどの西ヨーロッパやアメリカ合衆国の市民はソヴィエトや中国の人たちの世界観からの影響を受けていない。ほとんど何も知らないから彼らの世界観は一極的です。(略)一方、旧ソ連や中国の人は、昔も今も資本主義や西側の共産主義解釈に精通している。ということは、どちらがオープンで知識に恵まれているのか、ということですね。中国の本屋を覗くと、資本主義の文献もたくさんある。アメリカ合衆国やヨーロッパの本屋には共産主義中国の文献などまずない。(P71)」

 手軽な例では、ロシアの日本語ニュースであるSputnik日本語版(http://jp.sputniknews.com/)にアクセスしてみるのがよいと思う。プロパガンダだなとは感じつつも、日ごろ接しているのとは随分と違う視点があるのだということは実感できるだろう。

・本書の中で一番怖かったのは麻薬の話。「(チョムスキー)アメリカとしてはシチリアのマフィアと南仏のコルシカ・マフィアを(スト潰しのために)再興した。もちろんマフィアもただでは労働組合を潰さないから代価が必要だった。それがヘロイン産業のマフィア支配だった。これがかの有名なフレンチ・コネクションで、南仏からはじまって世界中に広まったのです。だからどこでも騒乱や転覆があると麻薬の売買がそれにつきまとうことには理由がある。よって、もしCIAがで政府を転覆して労働組合を潰すとかいうときには、まず必要なのは人、それから裏金、足のつかない資金ですね。それら揃えば世界中どこでもうまくいく。(P180)」

 余談だけど、初代ロボコップで悪役のクラレンス(マフィアのボス)がジョーンズ(オムニ社の幹部)に「人々が集まる。それを仕切りたくないか。麻薬への需要がすごいことになるぞ」と誘われるシーンを思い出した(うろ覚えだけど)。

・本書で言及されていることがらの幾つかは佐藤優本でも触れられていたので最後に少しリストアップしておく。

本書「(ヴルチェク)いまや搾取をあからさまにおこなっているのはフランスですね。アフリカじゅうでフランスが果たしている役割は信じられないくらいで、ジブチからソマリア、西サハラからリビアまでその行状は凄まじい。 (P167)」

超したたか勉強術(佐藤優)「フランスは西アフリカで石油やウラニウムなどの地下資源を巡って乱暴なオペレーションを展開している。(93.5% *電子書籍なのでページ数表示できない)」 

本書「(ヴルチェク)(ヨーロッパにおける)極右の台頭も当然だと思う。第二次世界大戦後にヨーロッパが世界の何千万という人を犠牲にして作り上げた、自己中心的な社会福祉システムの化けの皮がはがれてきたのです。 (P90)」

超したたか勉強術(佐藤優)「ネタニヤフ首相は、ここに来てヨーロッパにおける反ユダヤ主義という地金が出てきたことを察知したのではないか(94.1%)」

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