自分の中でのCIAというのは、いわゆる映画(それもアクション映画)に出てくるイメージがほとんどなのだが(中には「アルゴ」みたいなのもあるけど)、CIAだって官僚的組織なわけで、実際はこんな感じでやってます〜というのが、ある程度の説得力を以て描かれている。だが、本書で書かれているのは、表沙汰にして問題のない(あるいは既にバレてる)部分だけだろうし、しかも言及されていること全てが快刀乱麻を断つように明快にまとめられているというわけでもない。
例えばイラク戦争。開戦前には大量破壊兵器の有無が焦点となり、そのレポートはCIAが作成した。本書や他の本でも触れられているように、当時のCIA長官のテネットが大統領に「(大量破壊兵器があるのは)スラムダンク(確実)」と言ったというのは、かなり有名なエピソードなのだが、本書では、それは事実だったとした上で、そのレポートが適切性を欠いていたとは認めている。ただ、なぜ、そのようなレポートができあがることになったのかという経緯があまりにも細かすぎる。「レポートの執筆担当者が帰宅した後に、別の分野の専門家が全体を勘案しないままの一文を追加して、そのことを他の者に伝えていなかった」ために、そのような報告書が出来上がってしまった、というのだが、こうなると最近頻出している国内不祥事の言い訳のようなうさん臭さが漂う。
疑ってばかりでもつまらないので、ある程度素直に読み進めるならば、アメリカは、多分、我々が考えている以上に「世界の警察」としての責任を自覚しており、それを法治国家の枠組みの中で遂行する努力を放棄してはいないという姿が見えてくる。法の執行時には裁判所の令状が必要なのと同じように、CIAの活動は議会の監視下にあり、その承認には相応のプロセスが必要であり、大統領の認可が必要というのが本来のルールであることも分かった。
だが、本書を読んでいて著者のあざとさが見え隠れするように感じるのは、自分が著者のことをCIAの副長官まで務めた人間だからと身構えるあまりの下衆の勘繰りだろうか。
結局、関係者自身による回顧本というのは、書かれた内容をそのまま鵜呑みにすることはできない。ただ、こういうアメリカ関連のテーマは、ボブ・ウッドワードをはじめとした様々な立場の人たちが取り上げている。登場人物も重複してくるわけで、複数の本を読んで、そこから読み解くと、また浮き彫りになってくるものがあるだろう。
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