2013年6月22日土曜日

動乱のインテリジェンス 佐藤 優 (著), 手嶋 龍一 (著)

・「インテリジェンス」というキーワードの周辺での存在感が抜群に強い佐藤優と手嶋隆一の対談。とても読みやすいが、それに付いていくだけで、国際政治、外交に関する視座を少し分けてもらえる。最近の日本を取り巻く国際情勢が題材のため、必然的に内容はきな臭くなる。それが「動乱」というタイトルのニュアンス。

・本書で扱っている話題は
  竹島、尖閣、中国と沖縄の独立、鳩山のイラン訪問の裏側、トモダチ作戦、日米、日ロ関係

・「(手嶋)日本の国境はいま、縮み始めているー。国力に陰りが生じ、政治的指導力が衰弱すれば、周辺諸国はその隙に乗じて攻勢に転じ、国土は萎んでしまう。(P7)」そして、縮んでいるボーダーは国境だけではなく人間界と動物界との境界も、そうなのかも知れない。

・例えば、2012年4月の北朝鮮のミサイル発射時、韓国よりも日本の発表が遅れるということがあり、日本の国防情報の不備が指摘されたが、実はこれ、長期的に見たら「サードパーティー・ルール」が守られたため、アメリカからの信頼は勝ち得た政治的判断に拠るものだったのかも知れないと。

・「(佐藤)ギリシャの危機が一層深刻化していけば、EUは事実上の「為替ダンピング」に踏み出さざるを得なくなると指摘しておきましょう。これは帝国主義を絵に描いたような図式なんです。震災で弱っている日本の円が、なぜこれほど強くなるのか。それは「帝国としてのアメリカ」が基軸通貨たるドルをダンピングさせ、さらにいは「帝国としてのEU」も共通通貨「ユーロ」をダンピングさせているのが原因だと言っていい。(P208)」

・「(手嶋)(TPPについて)僕たちは、短絡的に、賛成・反対という議論をしているのではありません。二十一世紀のいま、新たに姿を現したTPPの本質とは何かを考えてみることが必要だと言っているのです。いまや新たな自由貿易の枠組みが、東アジア・環太平洋地域の安全保障と表裏一体になっているという視点は欠かせません。TPPの盟主たるアメリカは、世界経済の推進エンジンとなった東アジア・環太平洋地域をがっちりと囲い込み、ここを基盤に新たな安全保障の枠組みを構築して、海洋へせり出しつつある中国に対抗しようとしています。
(佐藤)アメリカは、大統領選の政治の季節を迎えて、日本の傘下にあれこれ注文をつけていますが、日本の要求を削ぎ落とす交渉のテクニックです。日本の参加なきTPPなど考えてもいませんから、日本にとって「TPP不参加」という選択肢など実際はあり得ません。(P211)」
 ちなみに大前研一はTPPなどアメリカ国内では全く問題ではなく、騒いでいるのは日本人だけで、締結したとしても実効性はなく、気にするほどのものではないと判断していたな。

・「(佐藤)(日米豪の同盟を敵視するのではなく)バランス・オブ・パワーによって、台頭する中国を牽制していくというのが、プーチン政権の基本戦略といっていい。(P219)」

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