山下氏の前著、「地方消滅の罠」は増田レポートをターゲットに、批判と言うより批難しつつも、安倍政権は評価するという内容で、全体的な印象は芳しくなかった。市立大のお師匠さまに言わせると、ベストセラーの寄生虫的な本で、著者本人に学会で会った時に具体的な数値の根拠を尋ね、それについての問題点について話をしてみたら口ごもって、明確な答えは聞けなかったとのこと。
そんな著者が、このタイトルで出してきたので、またかという感じで目を通してみたら、意外と面白く読み進めた。対談者の金井氏によるところが大きいのかどうかは分からないが、現在、政府が推進している「地方創生」の魂胆を性悪説に立って批判的に捉えつつ、そのような力学が国と自治体によって構造化してしまっていることについて言及しているのが面白い。金井氏が一種マキャベリズム的な護憲の発想で政府や自治体を性悪説で捉えているのに対して、山下氏が現場のスタッフに同情的であるというのも面白かった。
とは言え、この面白さは、ちょっとインテリなオッサンが居酒屋で談義しているレベルを出ていない。
「(金井)従属を甘受して直視できる覚悟は「敗戦」を「終戦」と呼びかえるこの国の人々にはありません(P157)」
「(金井)国とは権力を行使したい人間の集まり(P183)」
「(金井)誰も主体的には意思決定していないわけです。これは丸山眞男が言う無責任体制です。(略)(その)体制自体が一つの統治構造です(P213)」
「(金井)地獄への道は善意で敷き詰められている(P236)」
などなど。面白そうではあるでしょ?こういう話を居酒屋談義ということで面白く聞いている分にはよいが、それ以上のものではないというのが読後感。
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