2015年12月23日水曜日

「宇宙戦艦ヤマト」をつくった男 西崎義展の狂気 牧村 康正 (著), 山田 哲久 (著)

 一気に読んだ。宇宙戦艦ヤマトが好きだった人には面白く読めるはずだけど、作品理解が深まるような内容ではありません。
 TV版が発進したのはどのような経緯と情熱があったのか。その情熱を発信した西崎義展とはどのような人物だったか。俗物性を隠しもせず、愛人を何人も囲い、あまつさえ、同じマンションに住まわせるなどの奇行に事欠かない山師。そんな西崎氏の言動や詐欺まがいのエピソードの数々、そして事態の突破力や魅力。そんな舞台裏の情景が関係者の証言に基づいて組み立てられている。松本零士氏との原作者裁判の裏側事情もあるし、収監後の「復活編」完成までの道のりも面白い。また、その最期はヨットからの転落事故と当時は報道されており、間違ってはいないのだけれど、本書ではかなり詳細に、その時の様子が再現されている。やっぱり、宇宙戦艦に燃えた人は、西崎氏の最期の様子まで読み遂げてほしいと思う。

 西崎義展という人は本物のプロデューサーでありクリエイターだった。ジョブズに通じるものも感じる。ガンダムの富野監督が西崎のことを「敵」と呼び、ロマンと熱情だけであそこまでヒットした作品に負けるわけにはいかないという心情を持っていたというのが印象深い。
 70年代のヤマト、80年代のガンダム、90年台のエヴァ。最初に切り拓いた西崎氏が一番すごかったとは言わないが、最初の壁を突破するには並大抵の人間では務まらなかったのだろう。

 凋落していったウルトラマン陣営(エックスでちょっと持ち直したかなという印象だけど)、うまいこと軌道に乗せた仮面ライダー陣営。前者は円谷プロの初期メンバーという、チームによって生み出されたのに対して後者は石ノ森章太郎という個人によって生み出された。ヤマトは西崎義展という個人によって生み出されたが、あまりにも西崎氏個人に属し過ぎたため、本人の退場と共に没落していくのだろうか。出渕裕によるリメイクであるヤマト2199は出色の出来だったが、継続性や今後の発展性という点ではちょっとなあ...(STAR TREKのように歴史改変のリブートという線も採れなくはないだろうけど、それよりは深掘りの方がありそう)。

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