2016年2月21日日曜日

仮面ライダーから牙狼へ 渡邊亮徳・日本のキャラクタービジネスを築き上げた男 (竹書房文庫) 大下 英治 (著)

 原作者を除けば、仮面ライダー(昭和)といえば平山亨、アニメでは西崎義展の名前を聞くことが多い。本書は営業畑にいた渡邊亮徳を追ったもので、この名前は初めて知った。
 亮徳さんがすごいのは、仮面ライダーの企画の産みの親であり、仮面の忍者赤影、ゲゲゲの鬼太郎、マジンガーZ、ゴレンジャー、キャンディキャンディと日本の特撮アニメの企画に携わり、果ては牙狼の立ち上げまでやった人ということ。仮面ライダーを生み出したのは石ノ森章太郎だが、特撮ものの新しい番組をやろうと発案し、石ノ森章太郎に声をかけたのが亮徳さん。さらに、後にスカルマンとして世にでることになるデザインを周囲と調整し、受け入れられなった後に、バッタをモチーフにしたあのデザインが出るまで石ノ森、平山と試行錯誤を行ったのもこの人なのだ。

 最初に営業として「こんな番組をやろう」と発案するだけでなく、どんな世界観でいくか、とかコンセプトまで考える。また、鬼太郎やドラゴンボール、セイラームーンなどのアニメ化に際しては、発掘から周囲の説得も彼の仕事。携わった番組の数が多いこともあり、本書においては比較的淡々と彼の足跡が描かれている。

 アメリカのスタン・リーとも交流が深いらしく、自分が子供の頃に放映された特撮版スパイダーマンの企画も亮徳さんなら、レオパルドンという巨大ロボの設定をアメリカ側に認めさせたのも亮徳さん。いやぁ、面白い、すごい人だ。

 牙狼(今はアニメ版やってる)は、雨宮慶太が全てを創りだしたと思っていたのだけど、実はこれも亮徳さんが雨宮監督を見出して作らせた作品だったことを本書で知った。映画版ハカイダーを見て雨宮監督の才能を評価し、仮面ライダーやウルトラマンに続く新しい日本のヒーローを創造するように話を持ちかけたのも亮徳さん。黄金騎士というコンセプト、神仏を取り入れたデザインコンセプトまでが亮徳さんで、狼をモチーフにした具体的なデザインから後が雨宮監督。
 ちなみに、もし、牙狼はどれを見ればいいんだと迷っている方がいたら、「暗黒魔戒騎士編」を見てから「MAKAISENKI」というのがおススメです。今、リアルタイムでやってる「牙狼 -紅蓮ノ月-」は設定も登場人物も時代までもが違う話なので、ここから入るのもアリです(余計なお世話)。

 面白い作品では原作者や監督など、現場のクリエイターがクローズアップされることが多いが、スポンサーを含め、やはり多くの人が関わってこそなのだなということを本書を読んで実感した。ただ、本書はあくまでも渡邊亮徳という個人の軌跡に焦点があたっているので、業界全体での動きが分かるような作品も読んでみたい。同時代に西崎義展や徳間康快、角川春樹などの傑人も色々といたわけで、その辺りの関係性なんかまで分かると面白い。

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