2015年6月27日土曜日

小説 仮面ライダーディケイド 門矢士の世界~レンズの中の箱庭~ (講談社キャラクター文庫) 鐘弘 亜樹 (著), 井上 敏樹 (監修)

・鳴滝が◯◯するので、時期の設定としては番組の後か?相変わらず、小説としてのクオリティにはハラハラさせられるが、番組では終始一貫して傲岸不遜だった門矢士の意外な内面が描かれているのが面白い。

・なぜかまた、複数のライダーの世界を巡っており、天道総司ら、異世界のライダー達との交流の様子も描かれている。その都度、実はナイーブな士の心情を読めるのは小説ならではの楽しみだ。

・クライマックスであるはずの戦闘シーンでの描写が淡白、と言うより明らかにクオリティが低いのは残念。番組を全く知らずにこの本を読む読者などほとんどいないのだろうから、やはりファンサービスとして、お決まりの所作なりセリフは、もう少し盛り上げてほしかったところ。あまり淡白過ぎると少し欲求不満が残った。

小説 仮面ライダーW ~Zを継ぐ者~ (講談社キャラクター文庫) 三条 陸 (著)

 既にエクストリーム化を果たしつつ、最終回まではたどり着いていない時期での鳴海探偵事務所のエピソードという位置づけ。アクセルは既に登場しているが、既に正太郎達とは良好な関係にまでなっている段階。正太郎がひどい風邪にかかり、フィリップが正太郎になり代わって探偵稼業のフロントマンを務めるというお話。

 語り手はフィリップ。星の本棚の構成などが本人の口から語られているのが「興味深い」。あれって、テレビ見てるだけだとどういう仕組みになってるのか今一つ把握できなかったのでね。
 一方、本作では終盤まであまり出番のない正太郎。それでも、彼の存在意義がフィリップによって再確認される描写があり、正太郎ファンにとっても、なかなかに嬉しい構成。

 園崎一家がほとんど出てこないのが残念ではあるが、オールスター出演を意識するあまり、学芸会的になってしまっては本末転倒なので、これはこれで正解。文章的にも安定しており、入り込めるかどうかは別にして、仮面ライダーWの世界観を何とか把握するぐらいのことはできる。平成仮面ライダーの小説シリーズの中ではなかなかの良作だと思う。

 ところで本作の作者は亜樹ちゃんを一番愛しておるね。登場キャラの中で最も映像が浮かんだのが彼女だった。

2015年5月31日日曜日

小説 仮面ライダーカブト (講談社キャラクター文庫) 米村 正二 (著)

 著者はカブトの脚本家。本書の基本的な構成はテレビ版カブトのあらすじをなぞったもの。天道と加賀美の出会いから最後の決戦までの流れをダイジェスト的に追っている。さらに、決戦後に、加賀美が旅に出たひよりを追って東南アジアを彷徨う話が追加されたという構成。

 テレビ版のストーリーを追った部分は、印象に残ったセリフを交えながら描かれてはいるが、表現が淡白な上に、紙面の都合なのだろうか、あまりにも盛り上がらず、「入れるべき要素をとにかく消化している」という印象。また、文章として読みづらい箇所も多く、脚本と小説は、作法が大きく違うものなのだろうと思った。天道や加賀美(親父も含む)よりも三島さんの心情描写が多いような気がしたが、これは著者の思い入れか。いずれにせよ、本編を見ていない人が本書によってカブトの世界を把握することは無理で、はもちろん、あらすじを把握することすら不可能だろう。

 追加部分である決戦後にエピソードについては、それまでの本体部分よりも小説としては読みやすかったが、加賀美の「東南アジア・青春ひとり旅」という内容でしかなく、ワームも全く関係ないので、「仮面ライダーカブト」という作品として、こういう話がなぜ必要だったのかというのが分からなかった。総じて、この平成仮面ライダー小説版の中では残念な読後感だった。

イスラム国 テロリストが国家をつくる時 ロレッタ ナポリオーニ (著)

 イスラム国は、たまたまうまい具合に勝ち上がってきたテロリストが、ちょっとおだって(北海道弁)でかしたものだ、ぐらいに思ってた。本書を読むと、これまでの数々のジハードの失敗を教訓とし、新たなパラダイムを打ち立てるために、よく考えた上で周到にことを進めているのだという印象になる。
 イスラム国の動きは、近代国家の再定義を迫るものである。「従来のジハード集団から神話とレトリックを受け継ぐ一方で、国家建設という野望の実現に必要な現実主義と近代性を身につけている。」(P152)つまり、ちょっと調子にのったテロリスト集団、という領域をはるかに超えているのだ。
「イスラム国の第一義的な目的は、スンニ派のムスリムにとって、ユダヤ人にとってのイスラエルとなることである。」(P29)

「池上彰、渾身の解説!」というのは典型的なアオリ。本書の内容を上手にコンパクトにまとめたという程度のもの。ただし、それがなくても本書で提示されるイスラム国についての知見は十分に価値があると思う。

2015年2月15日日曜日

なぜ世界でいま、「ハゲ」がクールなのか 講談社+α新書 福本 容子 (著)

 関西では子どもの頃は「アホ」と同じぐらいの軽さで「ハゲ」と言っていた。「何言うてんねん、このハゲ」「アホなこと言うてると、しばくで、このハゲ」といったような感じで。
 大学時代の同期で、若くして頭髪が薄くなった者がいた。彼が長期休暇の間に関西でバイトをした時に、自分よりも少し若い年代の連中と一緒に会話をしていた時に、そんな感じで「何言うてんねん、このハゲ」と言われた時、「何もそこまでハッキリ言わんでも」と半泣きで抗議したらしい。閑話休題。

 本書は知り合いからススメられて読んでみた。タイトルからしてインパクトが大きいが、いつの間に、ハゲがそんなクール・ジャパンみたいなことになってたんだろうかと思う。
 内容的には、古今東西のカッコいいハゲのプチ列伝があったり、ハゲに対するお国別許容度を比較してみたりと、かなり面白いネタが詰まっている。また、マイノリティに対する社会の視線、多様性の許容度ということにもサラリと触れられている。
 もし、知り合いで頭髪を気にしていたり、秘密裏にカツラを使ってる人がいたら、決して他意はないことを宣言しつつ、本書の一読をおススメします。本書は決してハゲに対する揶揄的なものではなく、明るくポジティブにエールを送る本。これだったら、自分も薄くなったら思い切って剃髪するかな、と思うほど。

 なお、国内カツラ市場は1330億円。初期費用で70万〜100万かかる。しかもゴールがなく(ふさふさに戻ることはない)コストをかけてメンテナンスを継続しなければならない。ちなみに、効能が科学的に認められているのは塗り薬(リアップ)と飲み薬(プロペシア)だけらしい。ご参考までに。

【目次】
第1章 世界の政治家とハゲ
第2章 日本のハゲ
第3章 経営者とハゲ
第4章 髪の有無と影響力
第5章 髪の文化人類学
第6章 ハゲノミクス
第7章 ボウズファッション
第8章 ハゲのリアル
第9章 ハゲと日本経済

ターンエーの癒し 単行本 富野 由悠季 (著)

 一連のガンダム作品の中では、ターンエーガンダムが一番好きで、奇跡のような作品だと思っている。全ての始まりだから、やっぱりファーストでしょという知り合いもいるが、それを言ってしまうと広がりがないので、自分としてはファーストは別格だと位置づけている。ちなみに、今、リアルタイムでやっている「ガンダム Gのレコンギスタ」は富野さんが直々に監督を務める久々のガンダムだが、ターンエーガンダムへの橋渡し的な位置づけを感じさせる。

 そんなターンエーガンダムの制作舞台裏を富野監督自身の弁で読み解けるものと期待したのだが、期待外れだった。これは、こちらの期待が勝手なものだっただけということ。実際は、富野監督が、のたうち回っていると言うか、のたくっている姿を、読みづらい文章でつづっているという内容で、しかも、それがすこぶる偏執狂的なもの。そこここに、監督の作家性やガンダム、アニメ、映像作品に対する洞察なども散見され、興味深く読めるスポットはあるのだが、そんな偏執狂的な文章の波間にあるものだから、かなり読みづらいものだった。よい言い方をすれば、等身大な文章ということかな。

 ところでTV版のオープニング/エンディングソングは西城秀樹/谷村新司が歌っているのだが、本書で紹介されている彼らとのエピソードは、富野監督の性格とも相まって、なかなか感動的。

2015年2月8日日曜日

狩猟 始めました --新しい自然派ハンターの世界へ-- ヤマケイ新書 安藤 啓一 (著), 上田 泰正 (著)

 職場の同僚に聞くところによると、最近、じわじわと狩猟ブームが来ているらしい。ハンターになるまでの過程や、それ以降の体験を描いた小説やコミックも出版されてきているとのこと。世の中、「銀の匙」やそういう作品のように、「働くおじさん」的な色々な職場が様々な媒体で紹介されるのが一つの流れになっているのかも知れない。

 本書ではハンターになるまでのプロセスや、やってみないと分からない苦労話もサラッと盛り込みつつ、メインは狩猟という行為について、著者がハンターとして活動していく中で感じたこと、考えたことが綴られている。愛しい生き物としてのシカと美味しい食べ物としてのシカの境界線はどこにあるのか。この矛盾と言うか葛藤を受け入れている姿勢が好印象。

 狩猟はお手軽なものではない。昨年秋にシカ撃ちに連れていってもらった時に実感した。山の中を奥まで分け入るのだが、その時に立てる音は、山中に響くほど大きなもの。そうでなくても敏感な野生動物達が気づかないはずがない。シカなどの生態や行動パターンなどを頭に入れた上で動く必要があるのだが、そうやって少しずつ狩猟対象のことが分かってくることが自然との一体化につながると著者は表現している。同僚のハンターも、そういう心持ちには共感できるものなのか、今度、聞いてみよう。なお、本書の最終部分で、ハンター擁護が、若干、美化されて持ち上げ過ぎな印象。

 ちなみに、北海道のエゾシカは現在で約60万頭の推計。農業被害は年間で60億円(P180)。なお、農水省では平成28年度までに30万頭までの減少を目指している(第4期エゾシカ保護管理計画)のだが、こうやって被害額が出てきているということは、届け出があるということだろう。そうであれば、そのための保険制度があるのかも知れないと思って調べてみたら、それらしいものがすぐに見つかった。他にも、あまり表立ってはいないけど、色々な保険があるんじゃないだろうか。
http://www.maff.go.jp/j/keiei/hoken/saigai_hosyo/

【目次】
第1章 狩猟との出会い
第2章 動物観察と狩猟
第3章 自然暮らしの狩猟~どうしてハンターになったのか
第4章 動物を慈しむ心で野生肉を得る
第5章 皮や骨も大切に使う
第6章 野生動物と人間の暮らし
第7章 ハンターとなるために必要な手続き