2015年7月20日月曜日

「働き方」の教科書:「無敵の50代」になるための仕事と人生の基本 出口治明 (著)

 タイトルでは「50代」と書かれているが、20代からフォローしている。自分の年齢が近いからか、50代からの起業についての具体的な記述については少なからず参考になる箇所があった。しかし仕事と人生の基本については、どうも抹香臭さが抜け切らない。

 全体としては少し期待ハズレというのが正直な読後感。僕はこんなに本を読んでて、こんなことを知ってて、だからこういう見方をして、こういう動き方をしてきた、という感じの記述が多く、自慢ですか?と感じてしまう。読書家の割に、そう感じる箇所が鼻につくってのは、確信犯なのか脇が甘いのか自分の根性がひねくれているのか。

2015年7月11日土曜日

「人生二毛作」のすすめ―脳をいつまでも生き生きとさせる生活 外山 滋比古 (著)

 外山滋比古と言えば「思考の整理学」などが有名で、知に関する作法を具体的な技術として工夫を重ねて築き上げてきた職人という印象がある。本書は、そんな著者が、例えば退職後にどうやって有意義な人生を送っていくかを、自らが実践してきた具体的な心がけや方法と一緒に、平易に語ってくれる本。

 外山さんの文章は「上善如水」。するすると水のように入ってくるのだが、実は味わい深い。しかも、この味わいは、自分の中に受容体がないと反応できないわけで、正直なところ、「ふーん、それで?」という感じで、あまりピンと来ない箇所も多々あった。

 それでも「長い老後を実りあるものにするためには、一日一日の生活パターンを守ること、外にでること、この2つは鉄則だと心得ています。」こんな一言に反応するようになったのは、自分の年齢のせいなのだろうか。他にも「男子、厨房に入るべし。そして調理は段取りを旨とすべし、です。」など、かなり具体的。ちなみに、調理の段取りは脳によいと、脳関係の他の本にも書かれていた。

 タイトルに偽りはないのだけれど、読み進めてて、どうも、頑固爺さんが小言を書き連ねているような印象だった。すると著者自身があとがきで「この本はまるでシラフでクダを巻いているような趣きがあり、われながら恥ずかしい」とあった。確信犯だったんですね。ただし、やはり外山さん、お言葉のそこかしこに、きらめくものがある。

2015年6月27日土曜日

小説 仮面ライダーディケイド 門矢士の世界~レンズの中の箱庭~ (講談社キャラクター文庫) 鐘弘 亜樹 (著), 井上 敏樹 (監修)

・鳴滝が◯◯するので、時期の設定としては番組の後か?相変わらず、小説としてのクオリティにはハラハラさせられるが、番組では終始一貫して傲岸不遜だった門矢士の意外な内面が描かれているのが面白い。

・なぜかまた、複数のライダーの世界を巡っており、天道総司ら、異世界のライダー達との交流の様子も描かれている。その都度、実はナイーブな士の心情を読めるのは小説ならではの楽しみだ。

・クライマックスであるはずの戦闘シーンでの描写が淡白、と言うより明らかにクオリティが低いのは残念。番組を全く知らずにこの本を読む読者などほとんどいないのだろうから、やはりファンサービスとして、お決まりの所作なりセリフは、もう少し盛り上げてほしかったところ。あまり淡白過ぎると少し欲求不満が残った。

小説 仮面ライダーW ~Zを継ぐ者~ (講談社キャラクター文庫) 三条 陸 (著)

 既にエクストリーム化を果たしつつ、最終回まではたどり着いていない時期での鳴海探偵事務所のエピソードという位置づけ。アクセルは既に登場しているが、既に正太郎達とは良好な関係にまでなっている段階。正太郎がひどい風邪にかかり、フィリップが正太郎になり代わって探偵稼業のフロントマンを務めるというお話。

 語り手はフィリップ。星の本棚の構成などが本人の口から語られているのが「興味深い」。あれって、テレビ見てるだけだとどういう仕組みになってるのか今一つ把握できなかったのでね。
 一方、本作では終盤まであまり出番のない正太郎。それでも、彼の存在意義がフィリップによって再確認される描写があり、正太郎ファンにとっても、なかなかに嬉しい構成。

 園崎一家がほとんど出てこないのが残念ではあるが、オールスター出演を意識するあまり、学芸会的になってしまっては本末転倒なので、これはこれで正解。文章的にも安定しており、入り込めるかどうかは別にして、仮面ライダーWの世界観を何とか把握するぐらいのことはできる。平成仮面ライダーの小説シリーズの中ではなかなかの良作だと思う。

 ところで本作の作者は亜樹ちゃんを一番愛しておるね。登場キャラの中で最も映像が浮かんだのが彼女だった。

2015年5月31日日曜日

小説 仮面ライダーカブト (講談社キャラクター文庫) 米村 正二 (著)

 著者はカブトの脚本家。本書の基本的な構成はテレビ版カブトのあらすじをなぞったもの。天道と加賀美の出会いから最後の決戦までの流れをダイジェスト的に追っている。さらに、決戦後に、加賀美が旅に出たひよりを追って東南アジアを彷徨う話が追加されたという構成。

 テレビ版のストーリーを追った部分は、印象に残ったセリフを交えながら描かれてはいるが、表現が淡白な上に、紙面の都合なのだろうか、あまりにも盛り上がらず、「入れるべき要素をとにかく消化している」という印象。また、文章として読みづらい箇所も多く、脚本と小説は、作法が大きく違うものなのだろうと思った。天道や加賀美(親父も含む)よりも三島さんの心情描写が多いような気がしたが、これは著者の思い入れか。いずれにせよ、本編を見ていない人が本書によってカブトの世界を把握することは無理で、はもちろん、あらすじを把握することすら不可能だろう。

 追加部分である決戦後にエピソードについては、それまでの本体部分よりも小説としては読みやすかったが、加賀美の「東南アジア・青春ひとり旅」という内容でしかなく、ワームも全く関係ないので、「仮面ライダーカブト」という作品として、こういう話がなぜ必要だったのかというのが分からなかった。総じて、この平成仮面ライダー小説版の中では残念な読後感だった。

イスラム国 テロリストが国家をつくる時 ロレッタ ナポリオーニ (著)

 イスラム国は、たまたまうまい具合に勝ち上がってきたテロリストが、ちょっとおだって(北海道弁)でかしたものだ、ぐらいに思ってた。本書を読むと、これまでの数々のジハードの失敗を教訓とし、新たなパラダイムを打ち立てるために、よく考えた上で周到にことを進めているのだという印象になる。
 イスラム国の動きは、近代国家の再定義を迫るものである。「従来のジハード集団から神話とレトリックを受け継ぐ一方で、国家建設という野望の実現に必要な現実主義と近代性を身につけている。」(P152)つまり、ちょっと調子にのったテロリスト集団、という領域をはるかに超えているのだ。
「イスラム国の第一義的な目的は、スンニ派のムスリムにとって、ユダヤ人にとってのイスラエルとなることである。」(P29)

「池上彰、渾身の解説!」というのは典型的なアオリ。本書の内容を上手にコンパクトにまとめたという程度のもの。ただし、それがなくても本書で提示されるイスラム国についての知見は十分に価値があると思う。

2015年2月15日日曜日

なぜ世界でいま、「ハゲ」がクールなのか 講談社+α新書 福本 容子 (著)

 関西では子どもの頃は「アホ」と同じぐらいの軽さで「ハゲ」と言っていた。「何言うてんねん、このハゲ」「アホなこと言うてると、しばくで、このハゲ」といったような感じで。
 大学時代の同期で、若くして頭髪が薄くなった者がいた。彼が長期休暇の間に関西でバイトをした時に、自分よりも少し若い年代の連中と一緒に会話をしていた時に、そんな感じで「何言うてんねん、このハゲ」と言われた時、「何もそこまでハッキリ言わんでも」と半泣きで抗議したらしい。閑話休題。

 本書は知り合いからススメられて読んでみた。タイトルからしてインパクトが大きいが、いつの間に、ハゲがそんなクール・ジャパンみたいなことになってたんだろうかと思う。
 内容的には、古今東西のカッコいいハゲのプチ列伝があったり、ハゲに対するお国別許容度を比較してみたりと、かなり面白いネタが詰まっている。また、マイノリティに対する社会の視線、多様性の許容度ということにもサラリと触れられている。
 もし、知り合いで頭髪を気にしていたり、秘密裏にカツラを使ってる人がいたら、決して他意はないことを宣言しつつ、本書の一読をおススメします。本書は決してハゲに対する揶揄的なものではなく、明るくポジティブにエールを送る本。これだったら、自分も薄くなったら思い切って剃髪するかな、と思うほど。

 なお、国内カツラ市場は1330億円。初期費用で70万〜100万かかる。しかもゴールがなく(ふさふさに戻ることはない)コストをかけてメンテナンスを継続しなければならない。ちなみに、効能が科学的に認められているのは塗り薬(リアップ)と飲み薬(プロペシア)だけらしい。ご参考までに。

【目次】
第1章 世界の政治家とハゲ
第2章 日本のハゲ
第3章 経営者とハゲ
第4章 髪の有無と影響力
第5章 髪の文化人類学
第6章 ハゲノミクス
第7章 ボウズファッション
第8章 ハゲのリアル
第9章 ハゲと日本経済