2013年5月11日土曜日

なにもかも小林秀雄に教わった 木田 元 (著)

・木田元の著作は未読で、哲学者ということだけ知っている。なので、本書は「小林秀雄」論を期待して読み始めた。だが内容としては、彼がハイデガーへと至る道がどうやって形成されたかを知ることのできるといったものだった。そこに興味がなく、小林秀雄論を期待した者からすれば期待外れのエッセイに過ぎなかったという印象。ただし、木田さんが興味を持った複数の思想家と小林秀雄との共通性についての所見は面白かった。若干、牽強付会の印象もないではないが、優れた思想家であれば洋の東西を問わず、類似した問題意識、思考を辿るということなんだろうな。

・タイトルに偽りありと言ってもいいんではないだろうか。著者自身も書いてる通り、「小林秀雄だと思ってたが、ちゃんと思い返してみると、他にも師匠(と呼べる本)がたくさんいた」と、なかなか、タイトルに対して無責任な記述が。要所要所で小林秀雄が出てきてはおり、終章では「やはり小林秀雄が総元締めだったのかと思わないでもない」という記述があるが、これはこじつけた感が拭えない。

・歴史の歯車がもう少し違っていたら、哲学者ではなくて闇屋になっていたという戦後の暮らしぶりについての描写は面白かった。とは言え、「永山則夫」で、悲惨な戦後の家庭を本書の直前に読んだだけに、木田さんの境遇との違いに、少し気分は沈んだ。

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