2013年11月24日日曜日

ウェブ社会のゆくえ―<多孔化>した現実のなかで (NHKブックス) 鈴木 謙介 (著)

【要約】
・Webテクノロジー、それも「ソーシャルメディア」の浸透により、現実世界の意味が上書きされ、「多孔化」した社会となっている。これにより、従来型コミュニティの存在基盤や関係論が通用しなくなってきている。

【ノート】
・佐々木俊尚の「レイヤー化する世界」を読んだ直後に本書の存在を知り、何となくそのつながりや違いを明確にしてみたいと思ったのが本書を読む動機。

・「レイヤー化する世界」はウェブによって、個人のスキルやタレントのレイヤー化が可能になり、各員が緩やかで不安定なつながりを世界的に広げて活動してゆくという社会像を描いており、それはどちらかと言えば楽観的な肯定であるように感じられた。

・それに対して本書は、ウェブによってもたらされる現実空間の多孔化を、危機感を持って捉えているのが出発点。例えばデート中に相手が目の前にいるにも関わらずソーシャルネットワークにアクセスするという振る舞いを、単なるマナーの問題ではなく、現実空間の意味合いがウェブによって上書きされているとし、現実の物理的空間が人間関係に対して持っていた制約が喪失していると分析する。つまり、かつては同じ空間にいるということが密接な人間関係と同義であったのに、それが単なる「近接」をしか保証しなくなったということである。

・このことは従来型のコミュニティの成立条件を揺るがすことになる。同じ物理的空間にいても、その空間が持つ(あるいはその空間にいることの)意味が、人によって変わってしまうわけで、そのことを著者は「多孔化」と表現している。佐々木が「レイヤー化する世界」を「不安定」と表現しているのも、この、従来型パラダイムの動揺と通底しているように感じた。

・本書は、そのような状況について単に警鐘を鳴らすだけではなく、あくまでも社会学からのアプローチらしく、新たなコミュニティの創出を提言している。そこでは、現実の多孔化を積極的に認め、取り入れた上で、「儀式」による新たなコミュニティの創出を提言している。この提言については、自分は今ひとつピンとは来なかったのだが、多孔化という視点は面白く感じた。

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