「民話」というのは、神話的なグロテスクさを持っていて、不条理だったりするケースが多い。本書に収録された短い民話たちも、そういった要素を色濃く持ちつつも、他の国のものとは違った教訓だったり処世術が入っているのを感じた。大抵は表題作のように、教えを守って真面目にやっていれば報われるというパターンが多いのだが、中にはキツネとオオカミの話のように、狡猾な智恵を使って他者を陥れて自らが利を得ることを是として描いたものもあり、その根底には「騙される愚かさが悪いのだ」とする価値観があるように感じる。果たしてそれが「ユダヤ」民族の特性なのかどうかは分からないけど。
多くの中短編を締めくくる最後のパートは、神による世界創生から楽園追放、アベルとカイン、そしてノアの方舟という、創世記の話。どれも断片的あるいは間接的には聞いたことがあるが、きちんと読んだことはなかったので、本書で読めたのはラッキーだった。ダイジェスト的なまとめ方ではあるが、未読なら、この部分だけでも面白いはず。ちなみに、その壮大なスケール感に、手塚治虫の「火の鳥」を思い出した。
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