イギリスのスパイだったモームのどストレートなスパイ小説。短めのエピソードで構成されており、読みやすい。007みたいななアクションシーン等はほぼ皆無。作中でも言及されているが、スパイの「活動の大半は地道で退屈なもの」。しかも、本書の内容はモームの実際の諜報活動に近いということが注釈から分かって一層興味深い。中には、こんなエキセントリックな奴はおらんだろというような人物も登場してくるが、実際にいるんだよねえ、冗談みたいに変な人って。
アシェンデンの淡々とした諜報活動や、その冷徹な上司(結構人でなし)とのやり取りからイギリスという国が少し垣間見えるような気もするが、これは自分の勝手な妄想かも知れない。ちなみに、このアシェンデンは、手嶋龍一さんが「ウルトラ・ダラー」などで描く、同じくイギリスのスパイであるスティーブンに重なるような印象も少しある。
それにしてもケイパー夫妻のお話、第10章「裏切り者」は切ない。メチャ切なくて泣けます。
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