2021年9月4日土曜日

ウルトラマンマックス 視聴記-20(第31〜34話)

[2013/02/10(日)]
第31話 「燃えつきろ!地球!!」

 久々の全編ドタバタのギャグ編。なぜかメフィラスばりにインテリジェントな口調のモエタランガ。でもあなた、名前からしてギャグですから!不思議な光線を発するとみんなの瞳に炎が宿って、燃える燃える!マックス登場するも、戦闘BGMまで超早回し。そのせいで30秒でカラータイマーなマックス。はやっ!皆がハッスルした後に燃え尽きて動けなくなってしまうのは、実はモエタランガのウィルスによる影響。
 公園の芝生の上で動けなくなっているカイトの横に座り、地球人との同化が致命的な弱点だとマックスに諭す等身大なモエタランガ。前回の「勇気を胸に」のアンチテーゼ?ばかみたいな光景だが、やり取りの内容は高度に戦略的で知的。

 皆が燃え尽きてる中、枯れ気味で盆栽なんかいじってたトミオカ長官がウィルスの影響で元気になってしまった。それにしても、何で盆栽持ってダッシュバードに乗り込んでるんだ。「限界の向こうに自分の知らない自分がいる」だなんて、いいセリフです、長官!

 カイト、力を振り絞ってもう一度変身!でも出現した時からカラータイマーがなってるマックス。

 ウィルスならワクチンが作れる。ウィルスの影響で頑張る吉永博士だが、完成を目前にエネルギー切れ。それを引き継ぐイデダテ博士!

 ワクチンが完成してマックスも回復!こうなるとモエタランガなんて敵じゃない。空中から攻撃する時のアングル、サラッとやっちゃってるけど、なにげにカッコいいぞ!何だか音楽がちょっと映画っぽいのもよかった。お互いの健闘を讃え合うトミオカとダテの姿を見ながら、吉永博士が「ずっとこうやって限界をこえてきたのよ、あの二人は」とDASH隊員に語るラストシーン、しみじみといいなあ。前回も今回も、ちゃんと各員にスポットがあたるお話しだった。

第32話 「エリー破壊指令」

 第7話に登場したケサムの仲間が登場。今回は全世界のUDF基地の破壊を企む。エリーにハッキングをかけて身柄をおさえるとは手強そう。エリーはDASH基地全体を統括するコンピューターのインターフェースゆえ、彼女をおさえられるとDASH基地の機能もおさえられる。そのことを知ってるという時点で、彼らの情報収集能力の高さに驚かざるを得ない。ちなみに、捕まったとか言ってるが、エリーって戦闘能力、高くなかったっけ?今回は王子様の救出を待ちたかったのかな。

 今回の工作員ケルスは仮面ライダー龍騎のゾルダこと北岡弁護士!前回の神崎士郎と言い、どうやらこの星の工作員は龍騎の世界から調達しているらしい(笑)。ショーンが基地にかけられたハッキングプログラムの書き換えに成功!前々回に引き続きDASH隊員の活躍がちゃんと描かれているのがグッド。ちょっとケサムの面影を引きずってるミズキってのも悪くないが、やはり今回の主役はコバでしょ!二丁拳銃でエリーの救出だ!ケルス以外の工作員がデクノボウなのがちょっと。もしかしたら彼らはロボット的な存在で、工作員自体ではないのかも。

 撃たれたコバ。大丈夫かというヒジカタ隊長の問いかけにコバとエリーが同時に「(自分は)大丈夫です!」と「(コバ隊員は)大丈夫ではありません!」というのに胸キュンです。

 ケサムの時もそうだったが、戦闘能力は低くないケルス。しかしマックスによって撃破!

 コバのお見舞いに病室を訪れるエリー。最後の笑顔は何だかんだ言って極上。

[2013/03/17(日)]
第33話 「ようこそ! 地球へ 前編 バルタン星の科学」

 怪獣の出現を通報する少年ツトム君。でもDASHがやってくるとそんな痕跡はない。一緒に目撃したはずの駐在さんがツトム君に諭す、「不思議なことなど存在しないのだよ」って京極堂か!よく見りゃ何とウルトラマンレオの真夏竜さんじゃないですか!
 タイニーバルタン、ちょっと、こまっしゃくれた喋り方がメチャクチャかわいい。考えてみりゃえらく文明は進んでるから頭はいいんだよな。
 タイニーの説明によるとバルタン星人の間でも穏健派と過激派がいるって、派閥争いですか!?タイニーは穏健派で、過激派が地球に侵攻しようとしている危機を伝えに来たと。地球人の姿になったら女子校生(中学?高校?)。一人称が「ボク」ってのに超萌え〜。「男の子の姿の方がいい?」の言葉に、ツトム君と一緒に力一杯首を振って否定したワシ(笑)。女の子の俳優さんより、バルタン形態の声優さんの声の方が萌え度は高しと思ったら、同一人物だそうな。

 ほうきに乗って空飛ぶタイニーバルタンとツトム。今回はメルヘンですか。「バルルー♪」って、高い文明のくせにバカにしてんのかと思うような能力発動のかけ声だけど、タイニーがやると超かわええ~!
 重力を制御できるバルタン文明。地球上では、重力子(グラビトン)は、存在は予想されてるけどまだ確認はされていない(かつて大鉄人は使ってたらしいが)わけだから、なるほど進んじょる。そう考えると「バルルー♪」の時に光る輪は、超ひも理論で言うところの「閉じた」方?重力子はそちらに属してて、次元の影響を受けないんだもんね、確か。ずっと落ちない紙飛行機に「無限運動」の解釈をショーンに言わせるのも合わせて、けっこうSFしちょるね。ファンタジックSF?

 タイニー言うところの「過激派」、ダークバルタン登場。あの有名なバルタンの笑い声ではないのは、もちろんねらってのことだと思うんだけど、どういう意図なんだろ?「私は正義の宇宙人だ」、「地球人は全宇宙共通の敵」。もう、どうしようもないぐらい、まっすぐに宣言しちゃってるダークバルタン。これって、アメリカとイラクの構図ですか?

 ダークバルタンの重力を使った攻撃にギリギリで対抗するマックス。「ウルトラの科学力では対抗できないことを自覚するんだな」とダークバルタン。巨大な状態から更にもう一段階巨大化して「光エネルギーに頼る君にはここまで巨大化できないはずだ」と。この辺り、異文明間の科学技術対決という趣があって面白い。マックスも意地を張ってもう一段階、巨大化!でも、力及ばず。

 バルタンの攻撃は単なるビームエネルギーじゃなくて重力ベースの攻撃っぽい。ビルが崩壊するシーンで、単なる爆発にしていないってことは、そういう意図なのかな。だったら、さすがのマックス・クオリティ。

 文明力の差に加え、バルタンの挑発にのってしまってエネルギーを使い果たし、戦術面でも惨敗のマックス!ダークバルタンが高らかに吠える!「さぁ、言ってみろ、『ようこそ地球へ』と!」 何か台詞までかっこよくて、圧勝のダークバルタン!!


第34話 「ようこそ! 地球へ 後編 さらば!バルタン星人」

 圧倒的な科学力の前に、ほぼ為す術のないまま時間切れとなったマックス。そんなマックス=カイトを放ったらかしでツトム君とタイニーに付き合ってるミズキ。

 一方、ダークバルタンによって無重力状態にされてしまったDASHルーム。おかしくなってしまったエリーを元に戻すためにコバからの愛の告白!ええぇぇ!?「(コバ隊員は)既に「好き」というファイルにあります」って、そうだったの、エリー?「私の好きなコバのために」って、もうそこまで気持ちが成長してたの!?いいなぁ、コバ。これまでの活躍の度合いからすると、報酬のコストパフォーマンスがダントツで高くない?(笑)

 タイニーバルタン、重力制御の宇宙船で1週間かかる距離のバルタン星であっても、地球上での時間経過は2分。行って帰ってくると7年の時差が生じると。おぉ、ハードSF!「そんなことしたら寿命が」というツトム君に、クローンで幾らでも複製ができるというタイニー。サラッと可愛く言ってるけど、それを軽く言っちゃってるあたりにバルタン文明の救いがたさがあるのかも知れない、というのは深読みし過ぎ?あるいはそんなこと言ってる自分こそが「魂を地球の重力にしばられた」「今日、ここにいてはいけない存在」なのか?教えて、カミーユ!!

 タイニーとツトム君の呼びかけでカイト捜索を手伝ってくれた子供達全員の前で変身するカイト。いいの?

 気合いも十分なマックス、ダークバルタンを木っ端みじんに粉砕だ!と思ったら首だけでしゃべってるダークバルタン。色んな意味で怖いぞ!(笑) クローン技術で無限増殖して、大量のバルタンの群れが!マックスも対抗して分身を作った。つまりM78星雲でもこれぐらいのクローン技術は使えるってこと。マックスに対して「(宇宙の調和を乱す地球人を擁護する)その正義はいかなる正義か!」と鋭く問うバルタンと「攻めこむ側にいかなる正義もない!」と叫ぶトミオカ長官。あっぱれ、マックスの中でも屈指の名台詞!「ノンマルトの使者」の回のキリヤマ隊長に突きつけてみたいものだが、これはもうアメリカのイラク侵攻でしょ。ちなみにこの回が放送されたのは2006年2月、イラク戦争は2003年。

 タイニーバルタンが子供達の協力も得て銅鐸を鳴らす。その音はチベットの寺院、アメリカの教会の鐘、京都の嵯峨野の寺の鐘などに通じるなごみの音。この音で戦意を喪失したダークバルタンがガックリと崩れ落ちる。動けなくなったダークバルタンの肩に手をかけるマックス。「平和、それこそがマックスの正義なんだ」とトミオカ長官。ダテ博士の不思議な新兵器でタイニーバルタンと同じ状態に戻っていくダークバルタン。彼らの脳裏をよぎるかつてのバルタン星は空気も水もきれいな、地球のような星だった。バルタン達だって人間そっくりの姿だったんだ。なのに、自らの手で文明と環境を破壊し、あのような姿でないと生き残れないようにしてしまった。

 ツトム君と分かれてバルタン星に帰る時、タイニーの目からあふれる涙。こんなシーンをマックス以前のウルトラシリーズで誰が想像できただろうか?マックス、素晴らしい。そして、タイニー、かわい過ぎ!

2017年3月11日土曜日

俳句と暮らす (中公新書) 小川 軽舟

 母が俳句を趣味としており、著者の名前は聞かされていた。自分は俳句には全く興味がないのだが(と言いつつ歳時記は持ってるけど)どんな俳人なのかいなという興味で読み始めてみた。

 「ほぼ日手帳」が提唱している「毎日が記念日」の俳句版ということでって、それは最初の2ページで分かります。そして、それ以降は、なぜ俳句なのか、ということが全編にわたって述べられているのだけど、著者が銀行に勤める単身赴任のサラリーマンであり、そんな生活の中での俳句との付き合い方が開陳されているので、すこぶる共感度は高い。「付き合い方」というのは、日常生活の中で季節感や自分の心の動きなどを俳句に凝縮していくということだが、(少なくとも)自分には全く馴染みのない様々な俳句を引用しながら、俳句なフィルタリングを解説してくれるのが新鮮だった。

 散歩や料理の有用性を説くあたりは外山滋比古の主張と共通点が多く、自分も取り入れていかんとなぁと思った。また、「言葉を凝縮して整える」という行為についての著者の考察は、小林秀雄の「考えるヒント」の本居頼長についての言及と重なるところが多いのが興味深かった。

 安直だけど、本書と小林秀雄のおかげで、ちょっと古今和歌集を読んでみたくなった。

2017年2月25日土曜日

対米従属の謎:どうしたら自立できるか (平凡社新書) 松竹 伸幸

 要約をザックリいくと

・戦後、ドイツと日本では占領の状態が違った。ドイツでは連合国が絡み合ったのでアメリカは好き勝手にできなかった。そこで日本の占領についてはアメリカが自国だけで占領できるようにした。その結果、政治家はアメリカの言うことをよく聞く者から構成されることとなり、そのためであれば戦犯であっても構わないということになった。これはナチ関係者が徹底的に断罪されたドイツと比べても、その違いが際立つ。

・アメリカが日本の軍事化へと路線を転換したのは、もちろん冷戦によるもの。アメリカは、日本における軍事行動に際しては当然日本からしかるべき主張が出てくることを予想していたが、それをしなかった。その結果、例えば核の持ち込みなども「慣習」化されることとなり、この「慣習」化によって日本の対米従属は構造的かつ永続的なものへと変質していった。

・「核」「抑止力」は冷戦が終結し、テロが脅威となった今日の世界では説得力を欠くようになってきている。それなのに、「核の傘」頼りの日本でいいの?

 という感じ。

 右翼でも左翼でもなく、それぞれに語りかける。こういう人の言論には説得力がある。しかも、一部の左翼がヒステリックにやってきたように、一方的に吉田茂ら保守政治家らの非を鳴らす、というようなスタンスではないのも、個人的には好印象。

 しかし、いっつも本の売り方とかにケチをつけてるみたいでアレですが、この帯はどうなんでしょうかね。もう売るためなら何でもやるってことか。もちろん、田中宇さんが展開しているトランプ確信犯説に立った上で本書のあとがきでサラリと触れられている内容を紐付けて、この帯を付けてるんなら秀逸ですが。


レジリエンス入門: 折れない心のつくり方 (ちくまプリマー新書) 内田 和俊

 15分ほどでサラリと読了。ちくまプリマーなので、高校者向けの入門書といった内容。ほぼ既知の事柄ばかりだったが、この手の分野に疎い読み手にはかなりもよい入門書。感情とどうやってうまく付き合うかということなのだが、古典的なものからマインドフルネスまで網羅しているし、感情について考えるときには必ずその根底に横たわっている自分の価値観や思い込みを見つめる必要があるのだが、カーネマン、サルトルなどの置石もされている。サラリと読めるし、いいんじゃないですか。これで物足りなかったら久世浩司さんがオススメ。


2017年2月11日土曜日

アイデア大全―創造力とブレイクスルーを生み出す42のツール 読書猿

 「読書猿」の本ということで買うことには間違いなかったが、読む本が山積状態なのでしばらくしてからと思ったが、本屋でページをめくったら即買い!早くも今年のナンバーワン候補。自分には発想法や仕事術について「3種の神器」とも言うべき本があって、それは「知的トレーニングの技術」、「複眼思考の方法」、「ストレスフリーの整理術」なのだが、本書は間違いなくそこに連なる。

 一見、企画関係やマーケター向けのアイデア指南本の体を取ってるけど、そこで判断してはいけません。頭のこね方を微に入り細に入り手ほどきしてくれる。しかも手ほどきだけではなく、その方法の根底にある思想や考え方なんかも教えてくれるのだからありがたい。テーマによっては関連する本の簡潔なまとめとしても読める(ゴールドラットとか)。また、手を使って書くという身体性の効用がほぼ全編にわたって展開されている。

 紹介されている内容には少し玉石混交な感もあるが、これは今後の自分の関心や心の状態に応じて変わっていくのだと思う。それだけの深さを持った本。ただ、著者の読書量からすると、参考文献の紹介が意外と少ない印象。これはあえて抑えたのかな?

この本自体、著者がサイトでも重要書として言及している花村太郎の「知的トレーニングの技術」の発展的フラクタル(変な言葉?)と言えるか。

佐藤優辺りを震源地として最近は「技法」本流行りだけど、本書は間違いなく本当の技法を伝授してくれる本。ただし、本書はアイデアや発想がテーマなので、今後は他のジャンルでの続編を強く希望したい。

 それにしても、何で黄色なんだろう?表紙だけでなく中身のページも黄色。あと、ちょっと紙の独特の匂いが強くて気分が悪くなる時がある。

やり抜く力 GRIT(グリット) アンジェラ・ダックワース (著)

 週刊ダイヤモンドの店員書評で読みたくなった。具体的なトレーニングもあるとかって書いてあったので。さらに、Y村君との話で「グリット」がキーワードとして出てきたのだが、そういう「やり抜く力」は自分には足りないなあということを再認識したタイミングでもあったので、期待して読んでみたのだけど、しまった、飛びついて買うほどの内容ではなかった!!

 「やり抜く力」の中身については、中村天風さんを読んだことがあれば既視感がすごい。「やり抜くには、好きなことでなければダメ」なんていう、そりゃそうでしょうけど、それって、改めて力説して教えていただくようなことでしたっけ?と絶句してしまうようなお言葉も。しかも、どちらかと言えば「好きじゃないことでもやり抜ける力」の涵養方法を期待していた。さらには、ちょっと気の利いたライフハック系のサイトでは常識となっているようなTipsをアンソロジー的に蒐集してみたような側面も(「習慣化が大事」とか)。

 とは言え、本書はHONZやForbes Japanが主催している「ビジネス書グランプリ2017」の「ビジネススキル部門:で第1位。う〜ん、自分の感覚がズレてるんでしょうかね。



人口と日本経済 - 長寿、イノベーション、経済成長 (中公新書) 吉川 洋

 週刊ダイヤモンドの新年号で、2016年の経済書ベストを発表してて、本書は堂々の第1位。しかも人口なので、これは読まないわけにはいかんでしょということで読んでみた。

 主旨は、(先進国の)経済成長は人口で決まるものではなく、イノベーションによるということ(P89)。人口が少なくても「大人の紙オムツ」のようにイノベーションを起こして市場を創出すれば経済成長はできるということ。

 感想としてはイマイチでした。イノベーションの例が「大人の紙オムツ」って辺りに、著者の年齢的制約を感じるというのは別にしても、統計資料をもとに説明した後に出てくる結論に、論理的な接合を感じられなかった。人口学の歴史の概説にも統計の説明にも文句はないし、主張したいことにもそれほど異論はないけど、両者はつながってないですよね?という感じ。
 なお、もう一つ、違和感を感じた例を。著者がイノベーションの例としてイノベーションの例としてスターバックスを挙げてる(P77)のだけど、これでつぶれた町の喫茶店多数なんだろうから「市場の創出」ではなく単なるゼロサムでの取り合いじゃないんでしょうか?(創出した側面もあるけど)
 また、本書では、ピケティの「格差拡大を是正するために再配分が大事」という主張は、今や肯定する人が少ないと記述している(P88)が、そうなのか?決めつけが過ぎるような気がする。それに「生産性より分配の問題なのだ!」という意見(お師様)の方が自分には説得力がある。

 これで昨年の経済書No.1っておかしくない?と思ったが、著者は結構エラい先生らしい。「ダカラカー」。だったらつまらんぞ、週刊ダイヤモンド!(正確に言うと、選考は編集部じゃなくて大学の先生やアナリストによる投票結果らしいけど)