2013年12月22日日曜日

スズメ――つかず・はなれず・二千年 (岩波科学ライブラリー) 三上 修 (著)

・カラスほどではないが、スズメも結構好きだ。一時期、札幌の街中からスズメの声がほとんど消えた時期があり、どうやら伝染病だったらしいのだが、大変寂しかった記憶がある。

・そんなわけで期待して読んでみた本書だが、ハズレ。岩波科学ライブラリーでもこんなレベルの本があるんだと学習した。確かにスズメやカラスってのは、なかなか難しい研究対象だと思うが、この本では、知りたいことのほとんどが「だと思う」「分からないが」「多分」ばかり。サイエンス本と言うよりはスズメを題材にしたエッセイといった印象。

・また、本書の最後に、6枚の写真を掲載して、そこにスズメの巣があるのかを当てるクイズがあるのだが、正解の写真が見づらさ全開。スズメがどんな場所に巣を作ることがあるか、多分、自分は一般の人よりはよく観察してる方だと思うが、それでも分かりづらかった。編集者もイマイチ?帯は「愛すべき隣人のすべて」。岩波で、しかも科学ライブラリーでも、こんなあざといコピーを付けることがあるんだな。

・ただし、スズメに関する雑学というレベルであれば悪くない。スズメの出自はアフリカであるとか、日本では古事記にスズメに関する記述があるなんて、面白い。つまり、「岩波科学ライブラリー」から出版されているというのが、自分にとっては引っかかってるポイントなのかも知れない。

2013年12月15日日曜日

世界と闘う「読書術」 思想を鍛える一〇〇〇冊 (集英社新書) 佐高 信 (著), 佐藤 優 (著)

・ここのところ傾倒している佐藤優の対談本。相手は佐高信。

・幾つかの分野に分けて二人が放談しているという構成。各分野毎に必読本リストを挙げているので、参考に転記しておいてもよいかも、という感じ。

・佐藤さんの博覧強記ぶりが印象的ではあるが、それだけ。読みやすいし、読んでて面白い箇所もあるが、「読書術」についての本では絶対にないので騙されないように。帯だけならともかく、タイトルでここまで煽るってのは少しあざとくないか?

・佐藤さんの読書本ということであれば「読書の技法」がベストだと思う。

インターネット術語集〈2〉―サイバーリテラシーを身につけるために (岩波新書) 矢野 直明 (著)

・2002年の出版でありながら、意外と自分が知らないことも散見された。不勉強のいたり。「こんな本に書かれてる内容ぐらい、自分は全て知ってる」などと奢った先入観を持たずに、こういう本もきちんと読むようにしなきゃと思った。

この本の出版された時からレッシングの「CODE」は有名だったんだな。また、マーク・ポスターの「現実世界のエンティティであるはずのデータベースの文法が現実世界を規定する」との知見にはとても興味をひかれた。「グーグル・アマゾン化する社会」で述べられている危惧も、同じことを表現を変えて述べているということなのではないかと感じた。読んでみる必要がありそうだ。

・なお、「グーグル・アマゾン化する社会」は松岡正剛さんの「千夜千冊」でも取り上げられている。一読の価値アリ。

2013年11月24日日曜日

モチベーション3.0 ダニエル・ピンク (著), 大前 研一 (翻訳)

・人間を動かすOSであるモチベーションは、生存のための1.0から経済活動のための2.0、そして、これからは自己実現のための3.0へ。

・活動時のモチベーションとして使われてきた、いわゆる「アメとムチ」の報酬型行動原理に内包されていた「バグ」が、今の時代では頻出するようになっており、この時代には、もっと自分の「内発的」な欲求こそが、自らをより良く、しかも効率よくドライブさせるというのが本書の主眼。なお、「好きでやってるか報酬は要らない」というほど非現実的な理想主義ではないところが、3.0が2.0の次に位置されている所以。

・だが、不本意な状況や明らかなオーバーキャパの時に自分の心に生じる、心底「イヤだ」という気持ちと向かい合って突き詰めていけば、実は本書で書かれているような視野は誰でも獲得できるのではないかというのが正直な感想。また、「持続する『やる気!』をいかに引き出すか」というサブタイトルであるにも関わらず、その辺りのメカニズムなり方法論への言及があまりしっかりしておらず、自分的にはあまり得るものがなかった。ただし、これは原書にはない文言なので、出版社の煽りだと考えないと、著者のD.ピンクにはアンフェア。

・ブライアン・イーノの「OBLIQUE STRATEGIES」なんかが紹介されてるあたり、微妙なギーク感がウケてる理由なのか。妙に大前研一推しのD.ピンクだが、読んでるタイミングが遅いからなのか、相変わらずピンと来ない。

ウェブ社会のゆくえ―<多孔化>した現実のなかで (NHKブックス) 鈴木 謙介 (著)

【要約】
・Webテクノロジー、それも「ソーシャルメディア」の浸透により、現実世界の意味が上書きされ、「多孔化」した社会となっている。これにより、従来型コミュニティの存在基盤や関係論が通用しなくなってきている。

【ノート】
・佐々木俊尚の「レイヤー化する世界」を読んだ直後に本書の存在を知り、何となくそのつながりや違いを明確にしてみたいと思ったのが本書を読む動機。

・「レイヤー化する世界」はウェブによって、個人のスキルやタレントのレイヤー化が可能になり、各員が緩やかで不安定なつながりを世界的に広げて活動してゆくという社会像を描いており、それはどちらかと言えば楽観的な肯定であるように感じられた。

・それに対して本書は、ウェブによってもたらされる現実空間の多孔化を、危機感を持って捉えているのが出発点。例えばデート中に相手が目の前にいるにも関わらずソーシャルネットワークにアクセスするという振る舞いを、単なるマナーの問題ではなく、現実空間の意味合いがウェブによって上書きされているとし、現実の物理的空間が人間関係に対して持っていた制約が喪失していると分析する。つまり、かつては同じ空間にいるということが密接な人間関係と同義であったのに、それが単なる「近接」をしか保証しなくなったということである。

・このことは従来型のコミュニティの成立条件を揺るがすことになる。同じ物理的空間にいても、その空間が持つ(あるいはその空間にいることの)意味が、人によって変わってしまうわけで、そのことを著者は「多孔化」と表現している。佐々木が「レイヤー化する世界」を「不安定」と表現しているのも、この、従来型パラダイムの動揺と通底しているように感じた。

・本書は、そのような状況について単に警鐘を鳴らすだけではなく、あくまでも社会学からのアプローチらしく、新たなコミュニティの創出を提言している。そこでは、現実の多孔化を積極的に認め、取り入れた上で、「儀式」による新たなコミュニティの創出を提言している。この提言については、自分は今ひとつピンとは来なかったのだが、多孔化という視点は面白く感じた。

動物を守りたい君へ (岩波ジュニア新書) 高槻 成紀 (著)

・職場がら、こういう基本的なテーマについて勉強しておきたいということで読んでみた。

・本書の基本的なプロットは「動物を守りたい」という気持ちから獣医を目指す高校生ぐらいの年齢層に向けて語りかけるというもの。単に目の前の個体を救うという視点から、自然における種の位置づけという視点の大事さを説いている。例えば、ある種を救うために、生息に適した地に移送して繁殖させたところ、その場所の生態系が変わってしまい、別の種に危険が及ぶということもあるわけで、この辺りの塩梅ってのは、シムアース並みだ(←もっと難しいだろ。しかも題材が古いし)。

・今の職場で皆から教わっている内容のトレースではあるが、それを再確認できたという感じ。

2013年11月16日土曜日

ビジネスでいちばん大事な「心理学の教養」 - 脱「サラリーマン的思考」のキーワード (中公新書ラクレ) 酒井 穣 (著)

・マズローやミハイの「フロー」、「影響力の武器」なども参考図書に挙げられており、確かに「心理学の教養」というタイトルに偽りはない。キーワードを挙げて、その概要や現実社会への応用方法をコンパクトにまとめている構成も読みやすい。ただし、現実社会への応用方法が、紙数の制限もあるのだろうが、あまりにも表面的なのがちょっと惜しい。あくまでも「教養」ということなので、この分野の著名な作品に馴染んでいる人なら、重複が多い印象を受けるだろう。

・流し読みしていたが、いくつか知らない情報や新しい発見があった。「ツァイガルニク効果」、次に組織内で好ましくない行動を取っている者への視点、そして状況の抽象化スキルについて。

・「ツァイガルニク効果」はプレゼンの時などに自分が最近感じ始めていたことと同期した。組み立てられすぎたプレゼンでは、拍手はもらえても、聴衆との一体感はあまり形成されない。適度な隙があった方がいい。そのことに対する自分の考えを補強してくれる考え方だった。

・組織内で好ましくない行動を取っている者は、その組織における欠点などを明確にしているのかも知れないというのは新鮮な視点だった。

・「抽象化スキル」で語られていることは「人間の叡智」で佐藤優さんが語っていたエリートの条件と共通する。「自分のいる場所を客観的に認識してそれをきちんと言語で説明できるのがエリートの条件です。 『人間の叡智』(P157)」

・最後に書かれている著者の危機意識がダニエル・ピンクの「ハイ・コンセプト」と通底するものだったり、これからの世界の動きについての構想が佐々木俊尚の「レイヤー化する世界」と似通っているのが意外でもあり興味深かった。