・アメリカにおける貧困層の増大は社会的構造であり、それは軍隊への人員補充という国家的ニーズとも結びついている。
【ノート】
・災害対策、教育、医療、国が担うべき領域を「自由競争」の美名のもとに民営化し、その結果、効率/利益優先の形態になり、本来の対象であった国民のためのサービスから単なる営利活動になってしまった。
・例えば学校給食。アメリカ人の子どもに肥満が多いのは、運動もしないでジャンクフードばっかり食ってるからだと思っていたが、学校給食がカロリーだけ高くて栄養価の低いものを提供してコストを削っているからであって、肥満児童は貧困な環境の証という話。裕福な家庭の子どもは弁当を持たされると。
・例えば医療。出産するのに3日入院して200万円!そんな無茶苦茶な。
・借金までして大学/院まで卒業しても就職先がなく、学資ローンの債務だけは何と破産宣告しても消えない!追い詰められた人たちにとって軍隊への入隊が限られた、ほぼ唯一の選択肢になってしまう。そして、高校生にはじまり、借金に追われている壮年層にまで、聞こえのいい勧誘を行い、実態は全然違う職場=戦場に送り出される、という悲惨な状況が生産されている。しかも、それを行っているリクルーター達も、同じような境遇の貧困層の人々であるという構造には、救いがないようにしか見えない。
・さらには、軍隊ではなく、軍隊が外注している傭兵会社(例えばXeサービス社、本書内ではブラックウォーター社)で雇用すると軍人という縛りがなくなるため、ここでも実態とは違う勧誘文句による勧誘、労働の強制が行われている。「虐殺器官」や小島秀夫の「メタルギアソリッド4」で描かれていたものが想像の産物ではないことを知って戦慄した。
・アメリカという国は思ってた以上に深刻な状態であることを知った。日本て恵まれてるなあと感じてしまう。だが、米軍への勧誘はアメリカ国内に限定されてはいない。フィリピンや中国、インドでもリクルーターは暗躍している。もし、日本が似たような構造になっていき、我々が貧困層に転落し、養わければいけない家族がいたらどうするだろう?
「もはや徴兵制など必要ないのです」「政府は格差を拡大する政策を次々に打ち出すだけでいいのです。経済的に追い詰められた国民は、黙っていてもイデオロギーのためではなく生活苦から戦争に行ってくれますから」(P177)
・この本が出版されたのが2008年で5年前だから、今はどうなっているのか。この本は続編も出ているので、是非読んでみよう。また、この本に対する批判本も出ているみたいなので、そちらも併せて読む必要がありそう。
・堤未果は「ラジオ版学問ノススメ」でも聞いたが、訥々と語る印象だった。9.11までは証券会社勤務だったらしい。
・余談だが、この「ラジオ版学問ノススメ」はPodcastプログラム。iPhone等のiOSだけでなく、今はAndroid用でもPodcastを購読できるので、通勤時間などにはオススメ。なお、パーソナリティーの蒲田さんは北大文学部。知り合いではないが、年齢的には自分と少し重なってたかも知れない。
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