・リーブルなにわで目について興味を持った。岩波だから、あまり無責任な煽り本ではないだろうというブランドへの信頼もあった。ちなみにこの本の著者は朝日新聞の記者。
・3.11発生後の100時間=約5日間の官邸での原発事故への対応の様子が克明に描かれている。「描かれている」とひとくちに言ってもその信憑性が大事なわけだが、本書では菅元総理をはじめとする関係者へのインタビュー、そして彼らのメモやプレスリリース等を照らし合わせることでその裏付けとしている。もちろん、そのインタビューなりメモの中身すらデタラメ、あるいは巧妙に口裏を合わせたでっち上げという可能性もゼロではないが、今は本書での記述を信用して以下を続けることにする。
・東電、保安院などの無責任、と言うより無能ぶりに呆れると同時に、このような事態が起こった時の対処が手探りに近い状態で行われていたということに慄然とする。また、本書で描かれている東電首脳陣の無策、無責任っぷりが本当であるならば、そのことに対する責任が問われていないという現状に憤りを感じる。菅さんが怒鳴ったというのも、よっぽどの状態だったというのも本書を読むと分かる。と言うより、東電や保安院などの使いものにならない連中に対して、思わず声のトーンが上がらなかった関係者なんているのか?
・この本を読む限り、管さん、かわいそう過ぎない?
・災害発生時に必要なこととして、何が起こっているのかの状況把握はもちろんだが、それ以外に本書を読んで大事だと思ったことを列挙しておく。今、災害関連のプロジェクトにも関わっているので、結構参考になった。
-何があるのか
本書での例はSPEEDIなわけだが、つまり状況判断や予測などのために活用できる既存のシステムについて、どんなものがあるのかを知っておくこと。ちなみに放射能の拡散予測システムであるSPEEDIは文科省の管轄。だが、誰も官邸にその存在を進言することはなく、活用したのは外務省経由で打診を行った米軍のみ。
-誰がいるのか
その分野での専門家は誰か。本書では東電や保安院が頼りにならない状況で菅元総理が個人的な人脈でブレーンを組織した様子が書かれている。北海道だと北大、道工大、室工大と言ったところか。どこにどんな専門家がいるかを把握しておくことも重要。
-各部署で把握できる情報は何なのかを知っておく
例えば道内で災害が起きたら道庁辺りに対策本部が設置されることになると思うが、その時、関連部署でどんな情報を集約できるのかを、意思決定者が把握しておく。もちろん、その部署の責任者もそのことは知っておく必要がある。そして常に「◯◯についての情報は△△に集約されている」という状態がブレないようにしておく必要も。
-記録係の設置
一貫した記録係の不在により、いつ、何が起こり、誰が何を言ったかというのが把握しづらくなっている。対策本部などでは記録、それも書くだけではなく録音、できれば映像での記録があるべきなのではないかと思った。ただし、そこまで記録してしまうと、その場にいる関係者が後での責任追及を恐れて闊達な意見交換ができなく可能性もある。
-通信インフラの確保
携帯電話もさることながらインターネットなどのネットワークの確保、そして、そこにアクセスするためのデバイスの確保。菅さんが個人的に読んだブレーンの人は、あまりにも急な話だったので官邸にPCを持ってきておらず、調べものをするのに自分のケータイのiモードだったという記述があった。道庁なり各自治体は、災害が起こった時に対策本部が設置されるであろう部屋における通信インフラの確保を今から行っておくべきだ。
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