2013年2月2日土曜日

オタクの息子に悩んでます 朝日新聞「悩みのるつぼ」より 岡田 斗司夫 FREEex (著)

・「いつまでもデブと思うなよ」が大ヒットした岡田斗司夫の本。朝日新聞で悩み相談を受け持つ彼が、回答を出すまでの思考の道すじを解説している。タイトルを見た時は「世の中にはこんな不可思議な相談がある」という、例えば「プロ野球珍プレイ好プレイ集」というような、笑いをメインとした内容かと思っていた。実際は全くそんなことはなくて、岡田さんが真摯にプロとして相談者に向かい合った軌跡を著したものだった。

・「悩み」というのは無限ループのように、同じところでぐるぐる回って(回して)いることが多い。そこで彼が提示するのが

 悩みの書き出し(ジャグリング禁止)→分析(仕分け)→理由の解明→解決手段→追い込み(環境の強制)

 というフロー。なお、「追い込み」というのは「株式会社・自分」という考え方からきている。自分の中にはたくさんの人格と言うか社員がいて、その上位にいる「社長」格の統合的自分にできるのは、それを行動に移さざるを得ない環境に自らを「追い込む」ということ。

・岡田さんが相談者への回答を出すために使ったフレームワークは次の通り。
 1.分析
 2,仕分け
 3.潜行(深く、なぜ?なぜ?と潜っていって、底にタッチ)
 4.アナロジー(喩えてみる)
 5.メーター(今、100◯◯だから40◯◯まで減らそう)
 6.ピラミッド(自分の相対位置、ピラミッドのどこに位置しているのか)
 7.四分類(とりあえず4つに分類する)
 8.三価値(二極対立プラス1、とりあえず「今日」の解決のために)
 9.思考フレームの拡大(twitterしている社員説教するべき部下なのではなく、同じネットの一員、という例)
 10.共感と立場(上から目線じゃなく、相手と同じ温度の湯に入る)
 11.フォーカス(可能な行動に絞って結論)

・やはり最初は「書き出し」から始まるんだな。「その科学が成功を決める」という本でも、まずは書きだしてみることの有効性が書かれていた。書きだして分析して仕分けして、というのはGTDにも通じるアプローチ。

・実際の回答時に、これをどう適用したかというのも解説されており、分かりやすい。だからと言って、著者がサラッとやっている(ように見える)フレームワークの適用を、自分でも簡単にできるかと言えば、決してそうではないんだけど。加えて、例えば「どうしても共感できない時は、もらった相談内容をそのまま書いてトレースしてみる」など、独自の工夫が凝らされていることも見逃せない。いかに自分を使うか。「株式会社自分」の社長は、やっぱり会社の動かし方を知ってなきゃ。

・あれあれ?中2の女の子相談のメイキング読んでてちょっと涙ぐんでしまった。ちょうどかけてたBGMがColdplayのParadiseだったからかも知れないけど、岡田さんの意外な(?)誠実さ、心意気に打たれたからか。

・「まず、原稿をちゃんと完成させる。それからしばらく置く。できれば3日ほど置く」というのは、今、こうやって読書記録を書いてる自分も同感。読了後に一気呵成に感想を書いても、その後、発酵と言うか熟成が進み、新たに気づいたり、違う観点が生じてきたり、ということが結構ある。これは外山滋比古さんの「思考の整理学」でも書かれていたことと通じるものがあると思うんだけど、そちらを読んだ頃にはあまりピンと来なかった。最近になって実感できるようになってきた。

・意外と気になった言葉、「プロとは『納得できなくても締め切りを、約束を守ること』だ。」(P276)

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