2021年9月4日土曜日

ウルトラマンマックス 視聴記-20(第31〜34話)

[2013/02/10(日)]
第31話 「燃えつきろ!地球!!」

 久々の全編ドタバタのギャグ編。なぜかメフィラスばりにインテリジェントな口調のモエタランガ。でもあなた、名前からしてギャグですから!不思議な光線を発するとみんなの瞳に炎が宿って、燃える燃える!マックス登場するも、戦闘BGMまで超早回し。そのせいで30秒でカラータイマーなマックス。はやっ!皆がハッスルした後に燃え尽きて動けなくなってしまうのは、実はモエタランガのウィルスによる影響。
 公園の芝生の上で動けなくなっているカイトの横に座り、地球人との同化が致命的な弱点だとマックスに諭す等身大なモエタランガ。前回の「勇気を胸に」のアンチテーゼ?ばかみたいな光景だが、やり取りの内容は高度に戦略的で知的。

 皆が燃え尽きてる中、枯れ気味で盆栽なんかいじってたトミオカ長官がウィルスの影響で元気になってしまった。それにしても、何で盆栽持ってダッシュバードに乗り込んでるんだ。「限界の向こうに自分の知らない自分がいる」だなんて、いいセリフです、長官!

 カイト、力を振り絞ってもう一度変身!でも出現した時からカラータイマーがなってるマックス。

 ウィルスならワクチンが作れる。ウィルスの影響で頑張る吉永博士だが、完成を目前にエネルギー切れ。それを引き継ぐイデダテ博士!

 ワクチンが完成してマックスも回復!こうなるとモエタランガなんて敵じゃない。空中から攻撃する時のアングル、サラッとやっちゃってるけど、なにげにカッコいいぞ!何だか音楽がちょっと映画っぽいのもよかった。お互いの健闘を讃え合うトミオカとダテの姿を見ながら、吉永博士が「ずっとこうやって限界をこえてきたのよ、あの二人は」とDASH隊員に語るラストシーン、しみじみといいなあ。前回も今回も、ちゃんと各員にスポットがあたるお話しだった。

第32話 「エリー破壊指令」

 第7話に登場したケサムの仲間が登場。今回は全世界のUDF基地の破壊を企む。エリーにハッキングをかけて身柄をおさえるとは手強そう。エリーはDASH基地全体を統括するコンピューターのインターフェースゆえ、彼女をおさえられるとDASH基地の機能もおさえられる。そのことを知ってるという時点で、彼らの情報収集能力の高さに驚かざるを得ない。ちなみに、捕まったとか言ってるが、エリーって戦闘能力、高くなかったっけ?今回は王子様の救出を待ちたかったのかな。

 今回の工作員ケルスは仮面ライダー龍騎のゾルダこと北岡弁護士!前回の神崎士郎と言い、どうやらこの星の工作員は龍騎の世界から調達しているらしい(笑)。ショーンが基地にかけられたハッキングプログラムの書き換えに成功!前々回に引き続きDASH隊員の活躍がちゃんと描かれているのがグッド。ちょっとケサムの面影を引きずってるミズキってのも悪くないが、やはり今回の主役はコバでしょ!二丁拳銃でエリーの救出だ!ケルス以外の工作員がデクノボウなのがちょっと。もしかしたら彼らはロボット的な存在で、工作員自体ではないのかも。

 撃たれたコバ。大丈夫かというヒジカタ隊長の問いかけにコバとエリーが同時に「(自分は)大丈夫です!」と「(コバ隊員は)大丈夫ではありません!」というのに胸キュンです。

 ケサムの時もそうだったが、戦闘能力は低くないケルス。しかしマックスによって撃破!

 コバのお見舞いに病室を訪れるエリー。最後の笑顔は何だかんだ言って極上。

[2013/03/17(日)]
第33話 「ようこそ! 地球へ 前編 バルタン星の科学」

 怪獣の出現を通報する少年ツトム君。でもDASHがやってくるとそんな痕跡はない。一緒に目撃したはずの駐在さんがツトム君に諭す、「不思議なことなど存在しないのだよ」って京極堂か!よく見りゃ何とウルトラマンレオの真夏竜さんじゃないですか!
 タイニーバルタン、ちょっと、こまっしゃくれた喋り方がメチャクチャかわいい。考えてみりゃえらく文明は進んでるから頭はいいんだよな。
 タイニーの説明によるとバルタン星人の間でも穏健派と過激派がいるって、派閥争いですか!?タイニーは穏健派で、過激派が地球に侵攻しようとしている危機を伝えに来たと。地球人の姿になったら女子校生(中学?高校?)。一人称が「ボク」ってのに超萌え〜。「男の子の姿の方がいい?」の言葉に、ツトム君と一緒に力一杯首を振って否定したワシ(笑)。女の子の俳優さんより、バルタン形態の声優さんの声の方が萌え度は高しと思ったら、同一人物だそうな。

 ほうきに乗って空飛ぶタイニーバルタンとツトム。今回はメルヘンですか。「バルルー♪」って、高い文明のくせにバカにしてんのかと思うような能力発動のかけ声だけど、タイニーがやると超かわええ~!
 重力を制御できるバルタン文明。地球上では、重力子(グラビトン)は、存在は予想されてるけどまだ確認はされていない(かつて大鉄人は使ってたらしいが)わけだから、なるほど進んじょる。そう考えると「バルルー♪」の時に光る輪は、超ひも理論で言うところの「閉じた」方?重力子はそちらに属してて、次元の影響を受けないんだもんね、確か。ずっと落ちない紙飛行機に「無限運動」の解釈をショーンに言わせるのも合わせて、けっこうSFしちょるね。ファンタジックSF?

 タイニー言うところの「過激派」、ダークバルタン登場。あの有名なバルタンの笑い声ではないのは、もちろんねらってのことだと思うんだけど、どういう意図なんだろ?「私は正義の宇宙人だ」、「地球人は全宇宙共通の敵」。もう、どうしようもないぐらい、まっすぐに宣言しちゃってるダークバルタン。これって、アメリカとイラクの構図ですか?

 ダークバルタンの重力を使った攻撃にギリギリで対抗するマックス。「ウルトラの科学力では対抗できないことを自覚するんだな」とダークバルタン。巨大な状態から更にもう一段階巨大化して「光エネルギーに頼る君にはここまで巨大化できないはずだ」と。この辺り、異文明間の科学技術対決という趣があって面白い。マックスも意地を張ってもう一段階、巨大化!でも、力及ばず。

 バルタンの攻撃は単なるビームエネルギーじゃなくて重力ベースの攻撃っぽい。ビルが崩壊するシーンで、単なる爆発にしていないってことは、そういう意図なのかな。だったら、さすがのマックス・クオリティ。

 文明力の差に加え、バルタンの挑発にのってしまってエネルギーを使い果たし、戦術面でも惨敗のマックス!ダークバルタンが高らかに吠える!「さぁ、言ってみろ、『ようこそ地球へ』と!」 何か台詞までかっこよくて、圧勝のダークバルタン!!


第34話 「ようこそ! 地球へ 後編 さらば!バルタン星人」

 圧倒的な科学力の前に、ほぼ為す術のないまま時間切れとなったマックス。そんなマックス=カイトを放ったらかしでツトム君とタイニーに付き合ってるミズキ。

 一方、ダークバルタンによって無重力状態にされてしまったDASHルーム。おかしくなってしまったエリーを元に戻すためにコバからの愛の告白!ええぇぇ!?「(コバ隊員は)既に「好き」というファイルにあります」って、そうだったの、エリー?「私の好きなコバのために」って、もうそこまで気持ちが成長してたの!?いいなぁ、コバ。これまでの活躍の度合いからすると、報酬のコストパフォーマンスがダントツで高くない?(笑)

 タイニーバルタン、重力制御の宇宙船で1週間かかる距離のバルタン星であっても、地球上での時間経過は2分。行って帰ってくると7年の時差が生じると。おぉ、ハードSF!「そんなことしたら寿命が」というツトム君に、クローンで幾らでも複製ができるというタイニー。サラッと可愛く言ってるけど、それを軽く言っちゃってるあたりにバルタン文明の救いがたさがあるのかも知れない、というのは深読みし過ぎ?あるいはそんなこと言ってる自分こそが「魂を地球の重力にしばられた」「今日、ここにいてはいけない存在」なのか?教えて、カミーユ!!

 タイニーとツトム君の呼びかけでカイト捜索を手伝ってくれた子供達全員の前で変身するカイト。いいの?

 気合いも十分なマックス、ダークバルタンを木っ端みじんに粉砕だ!と思ったら首だけでしゃべってるダークバルタン。色んな意味で怖いぞ!(笑) クローン技術で無限増殖して、大量のバルタンの群れが!マックスも対抗して分身を作った。つまりM78星雲でもこれぐらいのクローン技術は使えるってこと。マックスに対して「(宇宙の調和を乱す地球人を擁護する)その正義はいかなる正義か!」と鋭く問うバルタンと「攻めこむ側にいかなる正義もない!」と叫ぶトミオカ長官。あっぱれ、マックスの中でも屈指の名台詞!「ノンマルトの使者」の回のキリヤマ隊長に突きつけてみたいものだが、これはもうアメリカのイラク侵攻でしょ。ちなみにこの回が放送されたのは2006年2月、イラク戦争は2003年。

 タイニーバルタンが子供達の協力も得て銅鐸を鳴らす。その音はチベットの寺院、アメリカの教会の鐘、京都の嵯峨野の寺の鐘などに通じるなごみの音。この音で戦意を喪失したダークバルタンがガックリと崩れ落ちる。動けなくなったダークバルタンの肩に手をかけるマックス。「平和、それこそがマックスの正義なんだ」とトミオカ長官。ダテ博士の不思議な新兵器でタイニーバルタンと同じ状態に戻っていくダークバルタン。彼らの脳裏をよぎるかつてのバルタン星は空気も水もきれいな、地球のような星だった。バルタン達だって人間そっくりの姿だったんだ。なのに、自らの手で文明と環境を破壊し、あのような姿でないと生き残れないようにしてしまった。

 ツトム君と分かれてバルタン星に帰る時、タイニーの目からあふれる涙。こんなシーンをマックス以前のウルトラシリーズで誰が想像できただろうか?マックス、素晴らしい。そして、タイニー、かわい過ぎ!

2017年3月11日土曜日

俳句と暮らす (中公新書) 小川 軽舟

 母が俳句を趣味としており、著者の名前は聞かされていた。自分は俳句には全く興味がないのだが(と言いつつ歳時記は持ってるけど)どんな俳人なのかいなという興味で読み始めてみた。

 「ほぼ日手帳」が提唱している「毎日が記念日」の俳句版ということでって、それは最初の2ページで分かります。そして、それ以降は、なぜ俳句なのか、ということが全編にわたって述べられているのだけど、著者が銀行に勤める単身赴任のサラリーマンであり、そんな生活の中での俳句との付き合い方が開陳されているので、すこぶる共感度は高い。「付き合い方」というのは、日常生活の中で季節感や自分の心の動きなどを俳句に凝縮していくということだが、(少なくとも)自分には全く馴染みのない様々な俳句を引用しながら、俳句なフィルタリングを解説してくれるのが新鮮だった。

 散歩や料理の有用性を説くあたりは外山滋比古の主張と共通点が多く、自分も取り入れていかんとなぁと思った。また、「言葉を凝縮して整える」という行為についての著者の考察は、小林秀雄の「考えるヒント」の本居頼長についての言及と重なるところが多いのが興味深かった。

 安直だけど、本書と小林秀雄のおかげで、ちょっと古今和歌集を読んでみたくなった。

2017年2月25日土曜日

対米従属の謎:どうしたら自立できるか (平凡社新書) 松竹 伸幸

 要約をザックリいくと

・戦後、ドイツと日本では占領の状態が違った。ドイツでは連合国が絡み合ったのでアメリカは好き勝手にできなかった。そこで日本の占領についてはアメリカが自国だけで占領できるようにした。その結果、政治家はアメリカの言うことをよく聞く者から構成されることとなり、そのためであれば戦犯であっても構わないということになった。これはナチ関係者が徹底的に断罪されたドイツと比べても、その違いが際立つ。

・アメリカが日本の軍事化へと路線を転換したのは、もちろん冷戦によるもの。アメリカは、日本における軍事行動に際しては当然日本からしかるべき主張が出てくることを予想していたが、それをしなかった。その結果、例えば核の持ち込みなども「慣習」化されることとなり、この「慣習」化によって日本の対米従属は構造的かつ永続的なものへと変質していった。

・「核」「抑止力」は冷戦が終結し、テロが脅威となった今日の世界では説得力を欠くようになってきている。それなのに、「核の傘」頼りの日本でいいの?

 という感じ。

 右翼でも左翼でもなく、それぞれに語りかける。こういう人の言論には説得力がある。しかも、一部の左翼がヒステリックにやってきたように、一方的に吉田茂ら保守政治家らの非を鳴らす、というようなスタンスではないのも、個人的には好印象。

 しかし、いっつも本の売り方とかにケチをつけてるみたいでアレですが、この帯はどうなんでしょうかね。もう売るためなら何でもやるってことか。もちろん、田中宇さんが展開しているトランプ確信犯説に立った上で本書のあとがきでサラリと触れられている内容を紐付けて、この帯を付けてるんなら秀逸ですが。


レジリエンス入門: 折れない心のつくり方 (ちくまプリマー新書) 内田 和俊

 15分ほどでサラリと読了。ちくまプリマーなので、高校者向けの入門書といった内容。ほぼ既知の事柄ばかりだったが、この手の分野に疎い読み手にはかなりもよい入門書。感情とどうやってうまく付き合うかということなのだが、古典的なものからマインドフルネスまで網羅しているし、感情について考えるときには必ずその根底に横たわっている自分の価値観や思い込みを見つめる必要があるのだが、カーネマン、サルトルなどの置石もされている。サラリと読めるし、いいんじゃないですか。これで物足りなかったら久世浩司さんがオススメ。


2017年2月11日土曜日

アイデア大全―創造力とブレイクスルーを生み出す42のツール 読書猿

 「読書猿」の本ということで買うことには間違いなかったが、読む本が山積状態なのでしばらくしてからと思ったが、本屋でページをめくったら即買い!早くも今年のナンバーワン候補。自分には発想法や仕事術について「3種の神器」とも言うべき本があって、それは「知的トレーニングの技術」、「複眼思考の方法」、「ストレスフリーの整理術」なのだが、本書は間違いなくそこに連なる。

 一見、企画関係やマーケター向けのアイデア指南本の体を取ってるけど、そこで判断してはいけません。頭のこね方を微に入り細に入り手ほどきしてくれる。しかも手ほどきだけではなく、その方法の根底にある思想や考え方なんかも教えてくれるのだからありがたい。テーマによっては関連する本の簡潔なまとめとしても読める(ゴールドラットとか)。また、手を使って書くという身体性の効用がほぼ全編にわたって展開されている。

 紹介されている内容には少し玉石混交な感もあるが、これは今後の自分の関心や心の状態に応じて変わっていくのだと思う。それだけの深さを持った本。ただ、著者の読書量からすると、参考文献の紹介が意外と少ない印象。これはあえて抑えたのかな?

この本自体、著者がサイトでも重要書として言及している花村太郎の「知的トレーニングの技術」の発展的フラクタル(変な言葉?)と言えるか。

佐藤優辺りを震源地として最近は「技法」本流行りだけど、本書は間違いなく本当の技法を伝授してくれる本。ただし、本書はアイデアや発想がテーマなので、今後は他のジャンルでの続編を強く希望したい。

 それにしても、何で黄色なんだろう?表紙だけでなく中身のページも黄色。あと、ちょっと紙の独特の匂いが強くて気分が悪くなる時がある。

やり抜く力 GRIT(グリット) アンジェラ・ダックワース (著)

 週刊ダイヤモンドの店員書評で読みたくなった。具体的なトレーニングもあるとかって書いてあったので。さらに、Y村君との話で「グリット」がキーワードとして出てきたのだが、そういう「やり抜く力」は自分には足りないなあということを再認識したタイミングでもあったので、期待して読んでみたのだけど、しまった、飛びついて買うほどの内容ではなかった!!

 「やり抜く力」の中身については、中村天風さんを読んだことがあれば既視感がすごい。「やり抜くには、好きなことでなければダメ」なんていう、そりゃそうでしょうけど、それって、改めて力説して教えていただくようなことでしたっけ?と絶句してしまうようなお言葉も。しかも、どちらかと言えば「好きじゃないことでもやり抜ける力」の涵養方法を期待していた。さらには、ちょっと気の利いたライフハック系のサイトでは常識となっているようなTipsをアンソロジー的に蒐集してみたような側面も(「習慣化が大事」とか)。

 とは言え、本書はHONZやForbes Japanが主催している「ビジネス書グランプリ2017」の「ビジネススキル部門:で第1位。う〜ん、自分の感覚がズレてるんでしょうかね。



人口と日本経済 - 長寿、イノベーション、経済成長 (中公新書) 吉川 洋

 週刊ダイヤモンドの新年号で、2016年の経済書ベストを発表してて、本書は堂々の第1位。しかも人口なので、これは読まないわけにはいかんでしょということで読んでみた。

 主旨は、(先進国の)経済成長は人口で決まるものではなく、イノベーションによるということ(P89)。人口が少なくても「大人の紙オムツ」のようにイノベーションを起こして市場を創出すれば経済成長はできるということ。

 感想としてはイマイチでした。イノベーションの例が「大人の紙オムツ」って辺りに、著者の年齢的制約を感じるというのは別にしても、統計資料をもとに説明した後に出てくる結論に、論理的な接合を感じられなかった。人口学の歴史の概説にも統計の説明にも文句はないし、主張したいことにもそれほど異論はないけど、両者はつながってないですよね?という感じ。
 なお、もう一つ、違和感を感じた例を。著者がイノベーションの例としてイノベーションの例としてスターバックスを挙げてる(P77)のだけど、これでつぶれた町の喫茶店多数なんだろうから「市場の創出」ではなく単なるゼロサムでの取り合いじゃないんでしょうか?(創出した側面もあるけど)
 また、本書では、ピケティの「格差拡大を是正するために再配分が大事」という主張は、今や肯定する人が少ないと記述している(P88)が、そうなのか?決めつけが過ぎるような気がする。それに「生産性より分配の問題なのだ!」という意見(お師様)の方が自分には説得力がある。

 これで昨年の経済書No.1っておかしくない?と思ったが、著者は結構エラい先生らしい。「ダカラカー」。だったらつまらんぞ、週刊ダイヤモンド!(正確に言うと、選考は編集部じゃなくて大学の先生やアナリストによる投票結果らしいけど)

ビッグデータと人工知能 - 可能性と罠を見極める (中公新書) 西垣 通

 西垣センセーの情報学のテキストは、難しそうな面構えの割に読みやすい印象があったので、本書も期待して読み始めたのだが、人間と人工知能との比較検討が乱雑。特に中盤から終盤にかけてはその印象が強い

 例えば。

 芸術は過去にないものを創り出すものだが、人工知能は過去のパターンから持ってくるだけなので、よって芸術は人間によってしか可能たり得ないというくだりがある。著者のお仕事と本書の性格から言って、では、人間が芸術を創り出す時の知能のプロセスが、人口知能のそれと、どう違うのかということを提示してくれて然るべきでわ?

 ただし、人工知能肯定派(カーツワイルとか)は、まだ解き明かされていない人間の知能の働きを、モデル化という形で単純化したまま、処理速度の向上を以ってシンギュラリティの強力な論拠としているが、それでは知能の働きの大事な部分がこぼれ落ちたままになるという主張には強く同意。とは言え、色々なものの解像度が粗くなっていくのは、例えば音楽のアナログ→デジタルへの移行やインスタント食品なんかとも共通な現象なので、文明の発展の必然なのかもという気持ち(諦念に近い)もあるけど。

 それと同時に、人工知能に感情や心がないと断定はできんでしょうとも思う。人間だって、人体を構成している物質は分かってるけど知能や心の働きは未解明。もしかしたら未知の物質なり引力・斥力の働きによる動的生成なりで動いているのかも知れない。だから、トランジスタやシリコンでできているものにも「心」の動きがあるかも知れない。戦国魔神ゴーショーグンで「機械は友達!」とかって言ってたアレだ(違うか)。

 AI礼賛なバラ色SF未来への批判的論旨をふむふむと首肯しながら読み進めていったら、あれれ?肝心なところの紐解きはスルーですか?というのが散見される印象。ただし、読む価値はある本だと思う。

2016年12月31日土曜日

2016年の読書

 今年の読了本は193冊。昨年の読了本は140冊。今年は「この一冊」を選びきれない。これは理解が浅薄であることを昨年以上に痛感し始めていることによるもので、その原因は、やはり友人達のお陰。自分の理解が、いかに浅いかということを自覚させられることしきり。というわけで、来年は冊数の目標はあえて立てずに、質的な充実を目指します。

 来年も1ヶ月10冊、120冊を量的な目標としつつ、1カ月に1冊は「これ!」という本を精読することを課題とする。だから年末には少なくとも12冊は、その内容について自信を持って語れる本ができてなくてはいけないってことになる。やっぱ読んだ本について、読んでない人にツッコまれて返答できないってのはカッコ悪いよね。

 そんな中、まぁ、今年読んで面白かったよ?と、おずおずとオススメするのが以下の5冊。

[地政学で読む世界覇権2030]
アメリカは偉大であり、でもそれはアメリカ人がエラかったからではなく、アメリカの国土が持つ地政学的な性能にのみ拠っているという、一見、トンデモな知見を、古代から現代までの文明の発展において地理が果たした役割を抽象しながら展開する本。さらには未来予想も、やっぱりアメリカだけがグレートと声高に主張している。この人にかかれば、別にトランプに頼らなくてもアメリカサイコー、ということになる。


[感情で釣られる人々]
感情が理性に負けてしまうトホホな局面に関するハウツー本かと思ったら、感情をダシに、うまく操られちゃってる我々の現状についてだった。バタイユを視野に入れながらの議論ということで、ちゃんと読まなきゃと思ったが、本書の白眉は理性的な文明人でいるための手法としてGTDを取り入れていること。その一事を以て姜尚中なんかが帯で本書を絶賛してるが、それはセンセー、ちょっと勉強不足カモです。


[リスク・リテラシーが身につく統計的思考法]
お師様からお借りした本。統計には全く弱いのだが、本書が主張するのは%が出てきたら具体的な数字に置き換えて考えるとダマサれにくくなるよということ。


[憲法の無意識]
日本人が憲法に対して無意識に持っているものは明治時代ではなくて江戸時代でしょ、という本。「先行形態」について学ばせてもらったのが大きい。また、カントの「永遠平和のために」で述べられている、ある意味恐ろしいほどの現実主義的な視点も勉強になった、とかって言わないで、原典にあたれって話か(笑)。


[ウルトラマン・デュアル]
札幌図書館一番ノリで読んだ。円谷プロのウルトラマンワールド多角化の尖兵と言える、老舗早川書房とのコラボ企画第2弾。短編集だった前作とは違い、本書は読み応えのある書き下ろし長編。

金子監督の平成ガメラが成功をおさめたのは、それが単なる怪獣パニック映画だったのではなく、自衛隊を中心に、人間社会の反応をシミュレーション的に描いて見せたのが大きな要因の一つだと言われているが、本作もそれに近い。苦悩しつつギリギリの妥結点を探る官僚達のやり取り。簡単になびく国民感情やレジスタンス。「いじめ」のメタファーでもあるヴェンダリスタ星人の地球人支配。戦闘地域を一歩でも出たら、ウルトラマンであっても自衛隊は攻撃せざるを得ないという切ないバランスゲーム。この辺りの重たい政治シミュレーションを読んでいると、脳天気なフツーのウルトラマンのストーリー展開がありがたく思えてきて戸惑った(苦笑)。ちなみに、そう考えると、やはりシン・ゴジラのバランス感覚はすごいということなのかも。ちょっと最後のカタルシスに欲求不満が残るが、最近、面白さを増してきている円谷陣営の動きを知っておくという意味でもオススメ。

2016年11月6日日曜日

エデン (ハヤカワ文庫SF文庫) スタニスワフ レム

 高校の頃、立て続けにレムを読んでいた時期があり、本書もハードカバー版(しか当時はなかった)で読んだはずなのだが、全く内容を覚えていなかった。スタニスワフ・レムは何度か映画化された「ソラリスの陽のもとに」の原作者で、ポーランドのSF作家。人間の価値観や思考体系を超越した異星の生命体との邂逅をテーマにした「ファーストコンタクト三部作」で世界的に有名になった。本作はその第1作目で、この後に「ソラリス」「砂の惑星」が続く。

 惑星エデンへの不時着を余儀なくされた宇宙飛行士たち。面子はコーディネーター、サイバネティシスト、ドクター、物理学者、化学者、技術者の6名。幸いにもエデンの大気構造は地球と似たものだったので、宇宙船の修理と並行して、限られたリソースを有効活用してエデンの探索を開始する面々。精巧な人工構造物が発見され、明らかに高度にオートメーション化された「何か」の生産プロセスが稼働しているのだが、工場の中には、なかなかにグロい有機生命体の死骸が累々と積み上げられていた。他にも、荒涼とした大地に生息する悪臭を放つ樹木(のようなもの)、空を飛ぶ哨戒機のような物体などが6人の前に出現する。正直言って、それぞれがどんな事象なのか、把握するのに骨が折れた。頭が固くなってるからかな。

 それにしても6名の宇宙飛行士は、まさに人類の知性を代表したかと思えるほど知性的で忍耐強い。

2016年9月24日土曜日

秘録 CIAの対テロ戦争――アルカイダからイスラム国まで – マイケル・モレル (著)

 CIAの長官代行まで務めた叩き上げのスタッフによる回顧本。網羅されているのは9.11、アルカイダ〜イラク戦争からスノーデン、ISまで。大統領へのブリーフィング担当を務めた著者の体験による関係者の言動は、ある程度割り引いて読んだとしても面白い。

 自分の中でのCIAというのは、いわゆる映画(それもアクション映画)に出てくるイメージがほとんどなのだが(中には「アルゴ」みたいなのもあるけど)、CIAだって官僚的組織なわけで、実際はこんな感じでやってます〜というのが、ある程度の説得力を以て描かれている。だが、本書で書かれているのは、表沙汰にして問題のない(あるいは既にバレてる)部分だけだろうし、しかも言及されていること全てが快刀乱麻を断つように明快にまとめられているというわけでもない。

 例えばイラク戦争。開戦前には大量破壊兵器の有無が焦点となり、そのレポートはCIAが作成した。本書や他の本でも触れられているように、当時のCIA長官のテネットが大統領に「(大量破壊兵器があるのは)スラムダンク(確実)」と言ったというのは、かなり有名なエピソードなのだが、本書では、それは事実だったとした上で、そのレポートが適切性を欠いていたとは認めている。ただ、なぜ、そのようなレポートができあがることになったのかという経緯があまりにも細かすぎる。「レポートの執筆担当者が帰宅した後に、別の分野の専門家が全体を勘案しないままの一文を追加して、そのことを他の者に伝えていなかった」ために、そのような報告書が出来上がってしまった、というのだが、こうなると最近頻出している国内不祥事の言い訳のようなうさん臭さが漂う。

 疑ってばかりでもつまらないので、ある程度素直に読み進めるならば、アメリカは、多分、我々が考えている以上に「世界の警察」としての責任を自覚しており、それを法治国家の枠組みの中で遂行する努力を放棄してはいないという姿が見えてくる。法の執行時には裁判所の令状が必要なのと同じように、CIAの活動は議会の監視下にあり、その承認には相応のプロセスが必要であり、大統領の認可が必要というのが本来のルールであることも分かった。

 だが、本書を読んでいて著者のあざとさが見え隠れするように感じるのは、自分が著者のことをCIAの副長官まで務めた人間だからと身構えるあまりの下衆の勘繰りだろうか。
 結局、関係者自身による回顧本というのは、書かれた内容をそのまま鵜呑みにすることはできない。ただ、こういうアメリカ関連のテーマは、ボブ・ウッドワードをはじめとした様々な立場の人たちが取り上げている。登場人物も重複してくるわけで、複数の本を読んで、そこから読み解くと、また浮き彫りになってくるものがあるだろう。

2016年9月3日土曜日

ショッピングモールから考える ユートピア・バックヤード・未来都市 (幻冬舎新書) 東 浩紀, 大山 顕

 「ショッピングモールは世界中で普遍的な、新たなコミュニティ形態の最先端の実験場」との見立てで行った対談集。

 「モールは、コンパクトシティの理念をもっとも正確に実現している。逆に言えば、コンパクトシティというのは、じつは市街地全体をモールにするという発想なんですよね。 (P39)」
 「要するに、ショッピングモールは、「人間にとって最適な環境をどうつくるか」というひとつの実験場だと思うんです。(略)しかも、国や地域の文化に影響を受けない実験場であるという部分が、とくに面白いと思うんですよね。どんな文化でも受け入れてくれる。 (P240)」

 ただし、あくまでも対談で「色々な視点で見てみる」という域を超えているわけではない。自分としては「ショッピングモールを地元の商店街に対する悪としてしか見立てないのはおかしい」という問題意識こそが、本書を読んだ一番の収穫。

 なお「先行形態」についての言及があり、同時期に読んでいた柄谷行人の「憲法の無意識」でも、結構重要な概念として紹介されていたので、奇妙なシンクロを感じた。今風に言えば「セレンディピティ」ってやつですか。

 ちなみに、本書のベースとなっているのは「ゲンロンカフェ」なる場での対談だったらしいが、こういう面白い催し物を札幌でも盛んにしたいなあ。ついでに出版までできたらいいなあ。

2016年3月14日月曜日

東京消滅 - 介護破綻と地方移住 (中公新書) 増田 寛也 (編集)

 昨年、日本中(特に行政関係者)に大きなインパクトを与えた「地方消滅」。その後、「地方消滅ー創生戦略編」と続き、本書は第3弾。中公新書の増田本は、セガールみたく「沈黙」ならぬ「消滅」でシリーズ化するのかと思ってしまうほど「消滅」づくし(笑)。

 東京圏における75歳以上の後期高齢者(≒要介護者)が今後、急増するが、それに対応できるだけの病院、介護施設がない。建設するににも大変なコストがかかる。
 「現代版姥捨て」との批判があるCCRCだが、「東京のツケを地方にまわすな」という捉え方ではなく、積極的にその組み立てに乗ることによって地域創生のポジティブファクターにすることができるというのが本書の主張。例えば杉並区はコストを負担して南伊豆町に介護施設を作っている。北九州市長も積極的な受け入れ(アクティブシニアだけど)をいち早く宣言した(しかし北九州市は色々と活発だなあ)。早く手を上げて連携すれば、地方サイドとしても医療・介護施設の建設コストを首都圏サイドに負担してもらい、人口も増え、また、そこに従事するので若い人の仕事も増えますよねという青写真。

 北海道なら北見や帯広が、施設(病床)的には比較的余裕を持って高齢者を受け入れられると分析しているのが興味深い。全国でそういった地域が41紹介されている(もちろん「現在は」ということで)。函館も入っており、新幹線開通と相まって、効果的な連携ができるのではないかと思うが、函館市でそういう議論は進んでいるのだろうか。

 でも、あれですね、中央からきれいな青写真を提示されて、それは、まぁ、よく考えられてて(色んな意味で)結構なんだが、つい警戒して身構えてしまう部分もある。だからと言って反対のための反対をしても不毛なので、地方である僕らの側から、よく考えられた提案ができないものかな。

2016年3月13日日曜日

アシェンデン―英国情報部員のファイル (岩波文庫) モーム (著)

 イギリスのスパイだったモームのどストレートなスパイ小説。短めのエピソードで構成されており、読みやすい。007みたいななアクションシーン等はほぼ皆無。作中でも言及されているが、スパイの「活動の大半は地道で退屈なもの」。しかも、本書の内容はモームの実際の諜報活動に近いということが注釈から分かって一層興味深い。中には、こんなエキセントリックな奴はおらんだろというような人物も登場してくるが、実際にいるんだよねえ、冗談みたいに変な人って。

 アシェンデンの淡々とした諜報活動や、その冷徹な上司(結構人でなし)とのやり取りからイギリスという国が少し垣間見えるような気もするが、これは自分の勝手な妄想かも知れない。ちなみに、このアシェンデンは、手嶋龍一さんが「ウルトラ・ダラー」などで描く、同じくイギリスのスパイであるスティーブンに重なるような印象も少しある。

 それにしてもケイパー夫妻のお話、第10章「裏切り者」は切ない。メチャ切なくて泣けます。

お静かに、父が昼寝しております―ユダヤの民話 (岩波少年文庫) 母袋 夏生

 まずタイトルに惹かれ、次に「ユダヤの民話」というのに惹かれたのが読もうと思った動機。

 「民話」というのは、神話的なグロテスクさを持っていて、不条理だったりするケースが多い。本書に収録された短い民話たちも、そういった要素を色濃く持ちつつも、他の国のものとは違った教訓だったり処世術が入っているのを感じた。大抵は表題作のように、教えを守って真面目にやっていれば報われるというパターンが多いのだが、中にはキツネとオオカミの話のように、狡猾な智恵を使って他者を陥れて自らが利を得ることを是として描いたものもあり、その根底には「騙される愚かさが悪いのだ」とする価値観があるように感じる。果たしてそれが「ユダヤ」民族の特性なのかどうかは分からないけど。

 多くの中短編を締めくくる最後のパートは、神による世界創生から楽園追放、アベルとカイン、そしてノアの方舟という、創世記の話。どれも断片的あるいは間接的には聞いたことがあるが、きちんと読んだことはなかったので、本書で読めたのはラッキーだった。ダイジェスト的なまとめ方ではあるが、未読なら、この部分だけでも面白いはず。ちなみに、その壮大なスケール感に、手塚治虫の「火の鳥」を思い出した。

2016年3月7日月曜日

ユービック (ハヤカワ文庫 SF) フィリップ・K・ディック (著), 浅倉 久志 (翻訳)

 「ユービック」は「ユビキタス」から。どこにでも偏在する。本書の中では邪悪な力に対抗するスプレーというのが最終形態。「邪悪な力」と言われると「聖なる侵入」の基本プロットだったりするのか?とも思うが、ディックにとっては根源的な概念の一つなんだろう。

 エスパーと、その力を中和するアンチエスパー。共に会社があるのだが、本書ではアンチエスパーの会社側が描かれている。社長のランシターと試験技師のジョー・チップ、そしてアンチエスパー達。彼らはビジネスとして月に出向くが、それはエスパー側の罠で、一同は仕掛けられた爆弾で吹っ飛んでしまい、社長であるランシターは、コールドスリープによる応急処置も間に合わず、死んでしまう。その後、アンチエスパー達が次々と不可思議な死を遂げる事態が発生する。

 最近、ヴァリス系を読んでたこともあり、何てまとまなSFだろうとホッとした(「高い城の男」も自分的にはまだピンと来なかったので)。ついでに言えば本作は市立大のお師さんがディックの中で一番好きとおっしゃっていることもあって、少し気合を入れて読んでみたのだけど、自分的にはディックのベスト、とまではいかなかったというのが正直なところ。とは言え、ランシター、ジョー・チップをはじめ、アンチエスパーの面々がそこそこ個性的。加えて、クローズアップされる何人かは、いわゆる「キャラが立って」いて面白い。また、自分達は本当に生きているのかどうか、存在基盤が揺らぎ始める中盤以降のゾクッとする感触はディックならではだし、SFならでは。なお、本書も高校時代に読んでるのだけど、全く覚えていなかった。

2016年2月27日土曜日

多々良島ふたたび: ウルトラ怪獣アンソロジー (TSUBURAYA×HAYAKAWA UNIVERSE) – 山本 弘 (著), 小林 泰三 (著), 三津田 信三 (著), 田中 啓文 (著), 藤崎 慎吾 (著), 北野 勇作 (著), 酉島 伝法 (著)

 7人の作家によるウルトラ作品アンソロジー。ウルトラQ、マン、セブンまでが範囲というお題とのこと。

 本書もそうだが、円谷プロの動きの多様性には期待できる。つい最近までテレビでやっていた「ウルトラマンX」は久々の良作だった(ただし設定やらギミックに関しては既視感が強く、仮面ライダー陣営の後塵を拝すること甚だしいと思う)。また、少し前になるが「ウルトラQ dark fantasy」、「ネオ・ウルトラQ」、そして今も続いているコミックの「ULTRAMAN」など、大人向けな世界観の作品も発表し続けている。子ども向け番組ではまだ試行錯誤をしている印象だが、それ以外の分野では結構、伸び伸びと遊んで世界を広げているような印象だ。
 「SFマガジン」の早川書房と円谷プロがタッグを組んで、こんな本を出していたとは知らなかった。まずは第1弾ということで、今後の動きも楽しみ。

「多々良島ふたたび」 山本弘
 ウルトラQとウルトラマンのクロスオーバー。皆が「似てるけど?」と思ってたピグモンとガラモンのつながりの解釈が秀逸。ウルトラ世界の設定を活かした真っ当なSF作品。

「宇宙からの贈りものたち」 北野勇作
 ベースはウルトラQの「宇宙からの贈りもの」だからナメゴン。ちょっと不思議な前衛舞台劇を見ているような構成ではあるが、あまり印象が強い作品ではなかった。

「マウンテンピーナツ」 小林泰三
 初代マンがベースだが、変身するのはギャル。怪獣を攻撃するなという世界的な武装環境保護集団「マウンテンピーナツ」がお話の主軸。
 でも設定がちょっと雑で、「国政世論を味方に付けてる」というだけで、このマウンテンピーナツは機動隊や自衛隊に発砲するわ、ウルトラマンにミサイル撃ちこむわ、やりたい放題。言動の身勝手さを強調することによって、彼らへの討伐を正当化するのが意図なのかも知れないが、それがあまりにも現実離れしていれば興ざめ。ちなみに本作品は、そんなマウンテンピーナツを「絶対、許せない!」と攻撃しようとする人間としての主人公と、不介入を貫く超越存在としてのウルトラマンという対立的構図がテーマ。
 ただ、この人の作品って、何か物足りなさを感じる。「AΩ」でもウルトラマン的な存在が出てくるのだが、今ひとつだったし、本作でもその印象は変わらなかったのが残念なところ。

「影が来る」 三津田信三
 ウルトラQの「悪魔ッ子」がベースで、出てくるのもウルトラQでお馴染みの面々。ホラー作家によるものなので、それっぽいテイスト。

「変身障害」 藤崎慎吾
 セブンをベースとしたスラップスティックコメディ。「ウルトラアイを使っても変身できなくなった」との悩みを、街で評判のカウンセラーに相談に来るモロボシダン。そこにメトロン、イカルス、ゴドラ、ペガッサ、チブルスが絡んできて...という話。。途中からオチが薄々分かるけど面白い。ダンも歳を取ってるという設定なので、是非、実写でやってほしい。

「怪獣ルクスビグラの足型を取った男」 田中啓文
 「怪獣類足型採取士(国家資格!)」の孤軍奮闘を描いた、本書の中で一番好きな作品。「怪獣が日本にだけ現れるのは、生物兵器として日本政府が怪獣を餌付けしているから」という解釈が斬新。ただ、この辺りの陰謀論が本作の主軸ではない。センス・オブ・ワンダーなSF感も本書の中で一番強い。

「痕の祀り」 酉島伝法
 怪獣の死骸を処理する現場を描いているのだが、正直、あまり分からなかった。

2016年2月21日日曜日

仮面ライダーから牙狼へ 渡邊亮徳・日本のキャラクタービジネスを築き上げた男 (竹書房文庫) 大下 英治 (著)

 原作者を除けば、仮面ライダー(昭和)といえば平山亨、アニメでは西崎義展の名前を聞くことが多い。本書は営業畑にいた渡邊亮徳を追ったもので、この名前は初めて知った。
 亮徳さんがすごいのは、仮面ライダーの企画の産みの親であり、仮面の忍者赤影、ゲゲゲの鬼太郎、マジンガーZ、ゴレンジャー、キャンディキャンディと日本の特撮アニメの企画に携わり、果ては牙狼の立ち上げまでやった人ということ。仮面ライダーを生み出したのは石ノ森章太郎だが、特撮ものの新しい番組をやろうと発案し、石ノ森章太郎に声をかけたのが亮徳さん。さらに、後にスカルマンとして世にでることになるデザインを周囲と調整し、受け入れられなった後に、バッタをモチーフにしたあのデザインが出るまで石ノ森、平山と試行錯誤を行ったのもこの人なのだ。

 最初に営業として「こんな番組をやろう」と発案するだけでなく、どんな世界観でいくか、とかコンセプトまで考える。また、鬼太郎やドラゴンボール、セイラームーンなどのアニメ化に際しては、発掘から周囲の説得も彼の仕事。携わった番組の数が多いこともあり、本書においては比較的淡々と彼の足跡が描かれている。

 アメリカのスタン・リーとも交流が深いらしく、自分が子供の頃に放映された特撮版スパイダーマンの企画も亮徳さんなら、レオパルドンという巨大ロボの設定をアメリカ側に認めさせたのも亮徳さん。いやぁ、面白い、すごい人だ。

 牙狼(今はアニメ版やってる)は、雨宮慶太が全てを創りだしたと思っていたのだけど、実はこれも亮徳さんが雨宮監督を見出して作らせた作品だったことを本書で知った。映画版ハカイダーを見て雨宮監督の才能を評価し、仮面ライダーやウルトラマンに続く新しい日本のヒーローを創造するように話を持ちかけたのも亮徳さん。黄金騎士というコンセプト、神仏を取り入れたデザインコンセプトまでが亮徳さんで、狼をモチーフにした具体的なデザインから後が雨宮監督。
 ちなみに、もし、牙狼はどれを見ればいいんだと迷っている方がいたら、「暗黒魔戒騎士編」を見てから「MAKAISENKI」というのがおススメです。今、リアルタイムでやってる「牙狼 -紅蓮ノ月-」は設定も登場人物も時代までもが違う話なので、ここから入るのもアリです(余計なお世話)。

 面白い作品では原作者や監督など、現場のクリエイターがクローズアップされることが多いが、スポンサーを含め、やはり多くの人が関わってこそなのだなということを本書を読んで実感した。ただ、本書はあくまでも渡邊亮徳という個人の軌跡に焦点があたっているので、業界全体での動きが分かるような作品も読んでみたい。同時代に西崎義展や徳間康快、角川春樹などの傑人も色々といたわけで、その辺りの関係性なんかまで分かると面白い。

火星にいった3人の宇宙飛行士 (RIKUYOSHA Children & YA Books) ウンベルト エーコ

 今月(2016年2月)19日にウンベルト・エーコが逝去した。「薔薇の名前」の映画でしか彼のことは知らないのだけど、たまたまタイミングよく、この絵本を1ヶ月ほど前に読んでいた。実際は、そろそろエーコも読みたいけど難しそうだから絵本からアプローチしてみようと思ったのがきっかけ。

 お話のプロットはタイトルの通り。3人の火星飛行士はアメリカ、ロシア、中国。最初はお互い、半目し合っているが、孤独感の中で連帯していく。そんな彼らの前に火星人が出現し、3人は団結して対峙しようとする、というお話。

 同じ状況下で想起される感情が同じである時、理屈抜きで無条件で通じ合うことができ、それが相互理解を促進するということか。

 絵本というのはサラッと読めてしまうのが曲者と言えば曲者。それにしても...何、この絵?子供向けの本でこの絵はかなり強烈なインパクトを与えるんじゃないかな。それを狙ってるんだろうけど。

2016年1月17日日曜日

9割のめまいは自分で治せる (中経の文庫) 新井 基洋 (著)

 Geonova(知る人ぞ知る)やってた頃から、時々目まいで立ち上がれなくなることがある。もともと耳が弱点の一つで、かつては突発性難聴なんてのもやったことがあるのでそれも関連しているんじゃないかと思う。めまい外来にも行ってみたけど、どうも要領を得ない。

 たまたま目にした本書。こう言っては失礼だが意外な良書でした。いや、まだ読んだばっかりなので効果は最終確定ではないんだけど、目まい用の訓練が数分でできるようなメニューで紹介されてるし、その解説や、どんな目まいに有効かというのが書かれているのもありがたかったりする。

 目まい外来に行った経験者なら分かると思うけど、目まい体操みたいな手軽なリハビリ運動の図表なんかをもらう。本書も、それに似てるけど、動きの解説が分かりやすく書かれているし、症状に応じたメニューの分類があるのもよい。目まいの場合、(何に由来するかにもよるけど)完治はないから、どう付き合っていくかが大事という主張を最初にきちんとしているのも好感が持てる。

 目まいで苦しんでる人がいたら、一読をおススメします。