2013年3月30日土曜日

最新型ウイルスでがんを滅ぼす 藤堂 具紀 (著)

【要約】
・ありふれたウィルスであるヘルペスに遺伝子組み換えを行いったウィルスで癌細胞だけを攻撃し、安全性も高い治療を行うことができる。しかし、実用化までへの遠い道のりには日本特有の特徴があり、この短縮化が望まれる。

【ノート】
・ターゲットを特定し、それだけを攻撃するウィルス。つまりメタルギアに出てきたFoxDieウィルスか。深いな、メタルギア。

・ちょうどなかにし礼の話で陽子線治療について知ったところだったので、癌治療最前線の情報がまた増えた。

・こちらで受け付けてるみたい。http://trac.umin.jp/hospital/ct.html

2013年3月24日日曜日

カラスの教科書 松原 始

・軽妙な語り口で面白く読める。元来、スズメとカラスが大好きなので、カラスに関する面白・珍エピソードについては既に自分でも体験しているものが多かったが、ハシブト、ハシボソの違いについては無知だったので知識を吸収させてもらった。下鴨神社の糺の森、そんなにカラスいたっけ?という印象だが、自分が子供の頃と今とでは都市環境も変わっているのだろう。

・知床に行くとワタリガラスを見られるらしいが、職場で聞くと、白糠辺りでも見られるらしい。まだ見たことがないので、是非見てみたい。

・それにしても札幌の図書館で自分の後に35人待ちで、市の施設のうち5館も購入済とは、ちょっとしたカラスブームなのか?

2013年3月23日土曜日

コクピットイズム No.11 MILITARY EDITIO―ヒコーキ操縦主義マガジン

・こんなマニアックな雑誌があるとは!F15に始まり、F16、F/A18、Su27からアパッチヘリなどのコックピットが掲載されている。しかも各パーツの名称付き。だからと言って、この本があれば操縦できるということにはならないが(笑)。

・F22やB2のコックピットの写真まで掲載されていることに驚き。この程度の情報は最早隠すまでもないということか。ユーロファイターのタイフーン機のF22に対する勝率が10%以下と英国防省がシミュレーション結果を発表しているというのも面白かった。

2013年3月16日土曜日

メディアが出さない世界経済ほんとうの話 田中 宇 (著)

・アメリカの動きには奇妙な矛盾が散見される。失敗するような政策を故意に採っているように見える。本書の著者はそれをアメリカ内の覇権主義と多極主義との暗闘と見る。覇権主義はアメリカの力によって世界のバランスを管理しようというもので、多極主義は世界を幾つかのブロックに分けてバランスを保とうというもの。覇権主義と多極主義という対立軸は、イデオロギーと資本家との対立軸でもあるらしい。
 覇権主義体制が続くのか、一挙にアメリカの力が低下し多極主義に移行していくのか。著者が見るところ、前者の巻き返しはかなり難しいらしい。ちなみに、この対立の歴史を読んでいるとまたもやメタルギアを思い出してしまった。

・紐解いていくと、元々ヨーロッパにはあんまり関わりを持ちたくなかった孤立主義的傾向の強かったアメリカに覇権主義の動きが出来たのは、戦後すぐにチャーチルがアメリカで「鉄のカーテン」演説で共産陣営の脅威をあおり、アメリカ中枢に人員を送り込み、アメリカをイギリスの「傀儡化」した時からの流れ。加えてアメリカにはイスラエルからも人員が送り込まれ、主として「ネオコン」層として機能している。中近東の憎まれっ子イスラエルとしてはアメリカに後ろ盾になってもらうことで自らの安全保障とすることが死活問題だった。

・本書は誇大妄想的な陰謀論説と言えなくもないが、根拠、出典が示されているものが多く、さすが田中宇という感じで、大変面白く読ませてもらった。単純な陰謀論説ってわけでもないしね。手嶋龍一さんや佐藤優さんの知見も知りたい、すごく知りたい。「トンデモ本」と一言で片付けられる可能性もあるけど。
 なお、「覇権主義 vs 多極主義」という構図は田中さんが2004年に出した「アメリカ以後」でも示されている。本書は2011年12月だからその7年後になるわけだが、その構図が変わったわけではなさそう。ただし、そうなると、堤さんの「貧困大国アメリカ」でルポされていた戦争産業や刑務所産業のための貧困層の創出という流れはどういう説明になればいいんだろう?

・意外なことに、ニクソンは多極主義。覇権主義側にウォーターゲートで失脚させられたが、その前に訪中を果たしている。多極主義的世界観において中国は欠かせないピースの一つ。田中角栄の日中有効の働きかけは、ニクソンとも通じた動きだったとも。

・アジアブロックのバランスを司る大国は中国。日本ではない。日本はそのポジションを狙えるだけの実力があるのに、戦後の対米追従のラクさ加減になれ過ぎてしまったと著者は見ている。また、欧米に対して、覇権を狙う野心はもう持ちません、という恭順の意思表示で、諜報活動を封印してきている。こう考えると、前の政権時に安倍さんが日本版CIAを創設すると言ってたのは意味深なような。あるいはそこまで考えてなくて、単なる覇権への右翼的野心なだけという可能性もあるが。そして、多極主義への流れは中国でも敏感に察知している。BRICSもそうだが、上海機構は隠然と、しかし着実に足場を固めつつある。今は投機筋からの攻撃を警戒して人民元を解放していないが、部分的に人民元建ての決済も始めている。

・日本はどうなるのか。アメリカからの自立を目指した小沢・鳩山は官僚によって潰された。官僚はアメリカの意思を「忖度」している根っこの部分、つまり外務省の力が大きく、「アメリカがいないと」「アメリカに逆らうと」日本は大変なことになるというパラダイムでずっと来ている。でも実は、田母神さんがtweetしている通り、自衛隊の実力は中韓よりも上だと考えた方がいいのかも知れない(決してその姿勢に賛同はしないが)。日本はわざとフラフラすることで、覇権主義にも多極主義にも与せず、上手に渡り合おうとしているのかも知れないという田中さんの指摘が面白い。実は以前にオスプレイ配備を巡る日本の動きについて、実は優柔不断を装いながら、米中、どちらからもバランスよく距離を取ってるんじゃないかと友人と(冗談半分以上だが)話したことがあったので、この指摘はそんなに奇異なものには感じなかった。

詩歌と戦争―白秋と民衆、総力戦への「道」 中野 敏男 (著)

・戦争への道は単に軍部の暴走によって導かれたのみではない。国民側に、それを受け入れ、推進していく精神的環境が十分にあったということを、北原白秋と彼の作る歌、そして、それを受け入れていった国民の精神的な姿勢の変遷と共に論証している。いわゆる「空気」の醸成は決して体制側からの押し付けだけで成されるものではない。そのことを検証した、出版元に言わせれば「瞠目の書」。いや、ハッキリ言って賛同します。

・司馬遼太郎は太平洋戦争への道をほとんど軍部、特に陸軍の暴走にその責を帰している。加えて、そのような陸軍を、日本近現代史の中で理解しがたい特異点と位置付けている。読んだ時に、他に反証材料もないから鵜呑みにしていたが、微かな違和感を感じてもいた。本書を読んでその違和感が解きほぐされた感じがした。

・関東大震災後に盛り上がった「互助」「絆」。3.11後の日本と重なる。体制からおしつけられたわけではなく、民衆から自発的に始まり、拡散していった全体主義的な「空気」。これもまた、今の日本とダブルところがある。

・そのような事態の後に「絆」の大切さに皆が意識を向けるのは当然のことだ。だからこそ、本書で展開されている検証に重みがある。今の僕らの状態、時代の空気は、もしかしたら大戦前夜に近いのかも知れないのだから。AKB48の各地版なんかが、構造的には近いのかも知れない。こいつらが各地の賛歌を同期して歌い出したりしたらちょっと危険信号。いや、正確に言えば、それだけでは危険信号ではないのだが、そこに我々が同感しまくって排他的に盛り上がったりしたら危険信号だ。

2013年3月7日木曜日

Newtype THE LIVE (ニュータイプ・ザ・ライブ) 特撮ニュータイプ 2013年 04月号

・今号で休刊だそうな。今まで購入してたわけではないので「休刊は残念」なんて言えない。だから買ったわけではなく、高寺Pのtweet(あれ?白倉Pだったかな?)で知って、高寺Pの松田賢二との対談に興味を持って購入した。期待してた以上に面白かった。こんな場所でもやっぱり響鬼の降板理由は明らかにしないんだな、高寺Pってば。

モバイルミュージアム 行動する博物館 21世紀の文化経済論 西野 嘉章 (著)

・リーブルなにわで見て興味を持った。何と言っても僕の社会人生活は博物館の内装屋からスタートしてるのだ。ずっとIT畑で働いてきたが、超低賃金の過酷労働であったにも関わらず仕事の達成感が高かったのはそちらの方。未だ北見の緑のセンターを超える満足感を味わったことがない。

・本書はこれからの博物館のあり方への一つの提言と言ってよい内容なのだが、どうも前半はしっくりこない。「博物館かくあるべき」と主張していることがおざなりと言うか紋切り型の陳腐な話にしか感じられなかった。また、経済的な視点について何度も触れている割には、具体的な数字の提示がないのでステレオタイプな印象を持ってしまった。ただし、後半の具体的な話になると少し面白くなってくる。

・モバイル・ミュージアムとは収蔵物を可搬モジュールにして、移動巡回展、企業への収蔵物の貸し出しなどを行うことにより博物館の資産である(と著者が主張するところの)収蔵物の活用度を上げて、博物館の社会への寄与、プレゼンスを高めようというもの。読んでみると、どうやらある程度の収蔵物の規模がある中型以上の博物館が主たる対象となりそう。札幌で言えば開拓記念館や青少年科学館辺りということになる。

・僕自身が興味があるのは、どちらかと言えば道内市町村の小規模な博物館なので、本書で書かれていることを実践すると言うより、本書でインスピレーションを得たアイディアを実践してみたいと思った。ただ、博物館が提供する最大のものは、通常の空間では不可能なほどの大規模な展示物が包みこんでくれる空間感だと僕は思っているので、それがもっとオープンになればいいのになと思う。大英博物館に行った時、子供から若者達まで、ジーパン姿で展示物の前で座り込み、スケッチしたり宿題をやっているのを見たのが強く印象に残っている。

2013年3月4日月曜日

ルポ 貧困大国アメリカ II 堤 未果 (著)


・前著に引き続き、あまり愉快な気分にはなれないアメリカのお話し。ただ、冷泉さんの「アメリカは本当に「貧困大国」なのか?」を読んだ後なので、のめり込み過ぎずに読んだ。

・とは言え、やはり衝撃的な証言の数々には慄然とする。保険制度の改正については、推進派、反対派、そして現場の医師などに対する取材により、単に国民皆保険にするだけでは問題が解決しないという複雑さを浮かび上がらせている。

・前著では国民貧乏にすりゃ、徴兵しなくても入隊するしか選択肢がないという状況に慄然としたが、今回もそれに匹敵するインパクトの取材が。その名も「刑務所ビジネス」。囚人達は最低賃金を遙かに下回る賃金で働かせることができ、それを企業が労働力として利用する(!)。更に、その賃金の低さに加えて、民営化された刑務所(!)ではトイレットペーパーの使用料まで囚人から徴収し、出所したら、ムショ暮らしの間に借金ができてしまっているという、出口ナシ状態。更に加えて、アメリカでは刑の軽重に関わらず3回、有罪判決を受けたら問答無用で終身刑だそうで、この制度の名が「スリー・ストライク」。ふざけてんじゃないかというネーミングだが、刑務所暮らしにさえコストがかかり、出所したら既に借金まみれって、絶望的におかしくない?

・アメリカがこんな大変な状況なのだとしたら、それを打開するために自らの経済的権益を拡張する手段としてTPP(不勉強だが)などを強行推進するのも、もっともな話だと思えてくる。我々が思ってる以上にアメリカはアメリカで追い詰められているのかも知れない。


2013年3月3日日曜日

ウルトラマンマックス 視聴記-19(第29〜30話)

第29話 「怪獣は何故現れるのか」

 出だしからウルトラQな雰囲気満載の今回。ゲロンガのデザイン、何かバカみてえ(笑)。

 いきなりカイトとミズキ、デート?自分が怪獣の牙を折ったとか言ってる喫茶店のマスタ、何者?と思ったらウルトラQの一平じゃないか!

 1964年にタイムスリップ。何と満田監督自らカメオで監督役で、「アンバランス」の撮影現場。「胡蝶の夢」に続き、メタフィクション!?「アンバランスからウルトラQ」とはリアルなお話し。音楽も今回は何となくそれっぽい。

 テレビで「怪獣はどこから来るんでしょう」の討論会。古来より人間が夢想してきたものが具現化したのが怪獣との見方が提示される。環境バランスについての言及は今回、特にナシ。

 マックスに牙を折られて苦しんでるゲロンガの目に涙。なぜか、ちょっとウルッときたじぇ。そのまま奥多摩山中に運ばれたとのニュース報道。行き先は怪獣墓場ではなかったのね。これって、マックスが運んだのをDASHが確認してプレスリリースしたってことか。奥地に返されておとなしくしてるんだったら最初っから出てくんなという気もするが、シカクマと同じで、人間の領域にやってくると痛い目見るよ、と学習させることで、処分することなく自らの領域に帰してやって共存を図るということ。おぉ、多様性保全!宇宙人は外来種だが怪獣は地球の多様性の一部なのだ。

 今回のラストシーンはウルトラQの三人組。いや、ジーンときます。だって、オリジナル・キャストなんだもん。こういうオマージュは最高だ。

第30話 「勇気を胸に」

 夢の中でカイトが観る、もう一つの、あったかも知れない世界。それはマックスに助けられなかったカイト、という世界。なぜマックスがカイトを選んで助けたのか。そして、マックスに助けられていなければ自分は死んでいたということに改めて気付き、底知れない恐怖と不安を感じるカイト。
 場所は変わって、いきなり怪獣グランゴンの死体が、体の一部を喰われている状態で発見される。グランゴンは第1話で出てきた怪獣で炎系の方。怪獣というのは腐敗が早くて、それ故に化石が発見されていないのカモ、という辺りがSF。強烈な匂いに辟易している隊員達をちゃんと描いてるのはさすが。映像からして腐敗臭漂ってるからなあ。さすが、相変わらず手抜きがありません。同じく第1話で出てきたラゴラスと対で出現しており、しかもラゴラスに捕食されたのではないかとの見方がこの段階で提示される。
 自分はマックスの力に頼ってばかりとカイトが悩むのが新しく感じた。こういうのって、大抵、他の隊員がいじけて言うものだからなあ。
 また、それに呼応するように「僕は今日はじめて怪獣を恐いと思った」というショーンのセリフがリアル。どうやらラゴラスは自分が強いことを知っており、人間を見下してるってのが。グランゴンを捕食することで能力を強化させるって、使徒かよ!そんなラゴラスは、今回「ラボラス・エヴォ」という、何だかランサーみたいなネーミングを拝命して再登場。
 新兵器開発に行き詰まって悩むショーンとカイトの会話。カイトの決意、ショーンの決意。それを横で聞いてるミズキの表情がまたいい!何というか、このシーン、いいなあ。何というか、このシーン、いいなあ、って二回言っちゃうほどいい。こういう場面を丁寧に描くのってすごく大事だと思う。その後でミズキがカイトに「あたしにも話してほしかったな」ってスネてみせたりして、もう何スかあーたがた、完全にイイ仲ッスかー!ちなみに、もう任務中でも「カイト」「ミズキ」になってきちょる!周りも完全公認ッスかー!!
 ショーンのためにラゴラス・エヴォを足止めして時間を稼ぐDASHメンバー。その姿はマックスに頼らなくても自分でできるとこまでやるんだというカイトの姿ともシンクロする。ちなみに、今回はダッシュバードの操演の仕方が独創的だったかも。
 そんなDASHからの攻撃を平然と手で受け止めるラゴラス・エヴォ、敵ながらかっこいいぞ!
 マックスとカイトの対話。マックスは地球を観察していたとカミングアウト。本来は干渉しないというのが原則らしいんだが、カイトの気持ちに動かされてしまったというマックス。改めて両者の絆が確認されたところで、いっくぜいくぜいくぜ!(←キャラが違う)
 酸いも甘いも、ではなく、熱いも冷たいも使い分けるラゴラス・エヴォの火球を手で落とすマックスがまた力強い!今回のマックスは最初っからクライマックスだぜ!(だからキャラ違うって) 着地の際に飛び散る土砂の量もおざなりじゃない。苦戦している時に「マックスまで喰われちまう!」というコバのセリフがリアル。そう、怪獣だから喰っちゃうんだよね。しかもこいつ、既に他の怪獣喰ってるわけだから、余計にリアル。

 マックスの攻撃が決定打を欠く中で、遂にショーンの新兵器が完成!ミズキが「やったわね、ショーン!」」というのがステキ。ちゃんと主人公以外の隊員でもお互いの健闘や達成を喜び合えるというのが、絆を丁寧に描くってことでしょう。そして何と、今回はショーンの新兵器だけで怪獣をやっつけた!素晴らしい!

 「勇気を胸に」なんて、ありがちなタイトルだけど、今回の作劇だとこのタイトルの重みが味わい深くなる。

 マックスとたまたま同一化したカイトだけど、もしかしたら他の人間と同様、死んでいたかも知れなかった。そのことを自覚したカイトにとって、人間の肉体の脆さは、マックスのパワーを体感した今となっては一層不安な要素であるはず。そんなカイトだからこそ、無力感に悩む他の隊員の気持ちも分かるし、それゆえに「勇気を胸に」各人の資質を武器に、一歩前へ進んでいくことの尊さが分かる。そして、カイト=マックスに薄々気づいてるミズキ(多分)だからこそ、カイトとショーンの会話でカイトが持つ強さと優しさを感じ取ることができるのではないか。だからこそ「あたしにも話してほしかったな」と可愛くスネてみたくなったのではないか。

 ついでに言えば、寒い系の怪獣だったラゴラスは熱い系のグランゴンを取り込むことで熱いも冷たいもいけるようになり、強くなった。カイトは人間としての己の脆さを自覚することにより、物理的な強さと精神的な強さの両方の価値を見出した。こんな構造を読み取るのは、ちょっと行き過ぎか?
 これまでのウルトラシリーズでも、仲間との絆を描いた作品はあったのだが、弱さに気付く主軸が主人公であるカイトだったことにより、奥行きがグンと深いものになったように感じた。