2014年9月15日月曜日

HOSONO百景 細野 晴臣 (著), 中矢 俊一郎 (編集)

 細野さんをはじめとするYMOの3人は自分にとって思い入れの強い人物だ。ほぼリアルタイムに彼らのアルバムを聴いていた世代で、エアチェック(死語)でインタビューなんかをラジカセ(死語)で録音し、何度も聴き返していたので、一度も会ったことはないのに、他人のような気がしない。熱烈なファンだったわけだ。

 本書は細野さんが話したものをそのまま活字にしたという趣向だそうで、「口伝、あるいは口承という古い方法だといえば聞こえはいいが、怠惰な性分なので書くことが億劫なだけだ」とは本人の弁。そのためか、読んでいると細野さんの声の響きを感じさせる心地良さがある。

 そんなわけで、読みやすいのだが、それでも、クラフトワークにはナチズムを背負っている、とか、解法された社会の雰囲気はスウィングによく表れている、など、ドキリとする社会観がところどころで披露されている。

 一般的に、ドイツ人って律儀で勤勉な部分が日本人と似ているといわれるけれど、彼らは責任感と義務感が強いんだと思う。だって、ナチの犯した過ちの咳にをずっとなんとかしようとしてきたわけでしょう。それがドイツ復興の基本となった。敗戦のことを忘れようとしてきた日本とは、その点が根本的に違うよ。 (P88)

 戦争が終わった直後のスウィングやブギウギの音源は、やっぱり解放感がある。たとえば、ナチに占領されていたパリが連合軍によって解法されたとき、スウィングがその象徴になって爆発的に流行したでしょう。だから、スウィングと解放感には密接な関係がある。 (P168)

 細野さんは音楽を通して社会学していたのだな、と感じた。

この日本で生きる君が知っておくべき「戦後史の学び方」―池上彰教授の東工大講義 日本篇 池上 彰 (著)

 終戦直後から今のアベノミクスまで、15のテーマで日本の戦後史を概観する。知ってることから知らなかったこと、曖昧なことまで網羅されており、ザッと読んでおくと、自分のような基本常識が偏っている人間にはよい。いつもの通り、読みやすいし。

 しかし池上さんの本を読んでると、身につけておきたい「恥をかく」ような基礎的な知識が、どれだけたくさんあるねん、という気になる。それにしても、東工大の学生は、いいねえ、と言ってしまう自分のフォーカスは、池上彰という著名人に対するブランド信仰なのか。

 孫崎さんの「戦後史の正体」と併読していると、池上さんのバランスがよく分かる。孫崎さんが、とかく、アメリカの陰謀だと主張する事件について、池上さんは同じ歩調のところもあれば、スルーしているところもあるし、匂わせる程度のところもあったりする。この二人が同じ見解であれば、ほぼ確定でいいんだろうなと感じる。あとは「ヤルタ-戦後史の起点」も併せて読んでみるかな。ちなみに池上さんは「世界」は購読してないんだな、確か。


海洋地球研究船「みらい」とっておきの空と海 柏野祐二 (著), 堀E.正岳 (著), 内田裕 (著), 構成・文 ネイチャープロ編集室 (その他)

 Lifehack.jpの管理人でありMoleskineやevernoteの筋でも有名な堀氏が共著。そんなことは全く知らずに手にとった。研究者だとは知ってたけど、JAMSTECだったのね。

 美しい写真が主体。雲好きなので、それが目当てだった。目を通すのに時間はかからない。それでも、最近の気象や地球環境についての先端研究が極地で行われていることの意味や、その活動内容について概説されているので、単なるアルバムというだけでは終わらない。

ぼくがジョブズに教えたこと――「才能」が集まる会社をつくる51条 単行本 ノーラン・ブッシュネル (著), ジーン・ストーン (著), 井口 耕二 (翻訳)

 正直、イマイチだった。その後、本書のことを知った千夜千冊サイトも読んでみたけど、そんなに詳しく掘り下げてるわけでもなく、なぜ正剛さんが取り上げたのかよく分からない。経営者目線だと受け取り方が違ってくるのか?そうでない自分にはあまり役に立たないということなのかな?雇われる側としても参考になる部分はもちろんあったけど。

 この本を読む限りでは、著者はよほどの性善説なのか、それとも器の大きなリーダーというのは、そういう次元を超越したものなのか。極言すれば、利用できるものは何でも利用する、ということでもあるし、適材適所、ということでもあるのだろうけど。

 それにしても、何でアメリカのこの手の本は、文章のフォーマットが同じなんだろう。それが完成された形式だからなのか?