2014年10月4日土曜日

材料革命ナノアーキテクトニクス (岩波科学ライブラリー) 有賀 克彦 (著)

・中学生の頃、歯医者で考えた。虫歯というのは化学反応によって歯が侵蝕されていることなのだから、歯以上に結合しやすいものを患部に詰めたら、そちらに全て吸収できるのではないかと。とにかく、虫歯の治療がイヤだったからアタマを絞ったのだが、叔父である歯医者は、残念ながら、そんな技術はないと教えてくれた。

・ただ、本書を読んだら、それも可能になるのではという気がしてくる。細菌の活動を抑えるのか、それとも歯質に有害な酸を中和するのか、いずれにせよ、ナノレベルの世界での人工的制御が可能になれば、夢ではないだろう。

・「ナノテクノロジー」という言葉は、今やそれほど珍しい言葉ではなくなってきたが、本書で紹介されている「ナノアーキテクトニクス」は、なかなかにSF度が高い。既存のものをどんどん小さくしていくことを「トップダウン」アプローチと言い、これはイメージしやすい。一方、物質を原子レベルからの制御などによって組み上げていく「ボトムアップ」アプローチによって作られる素材は、既存にはない物質になる。
 本書では応用例として、「汚れない窓ガラス」や「自動的に除菌する便器用コーティング素材」、「電子ペーパー」、電池、原子スイッチを応用したコンピューターや原子メモリ、人口光合成などを例として紹介している。

・理系色が強く、イオン構造なんかが出てくるので、自分は完全に構造を理解することはできなかったが、どんな世界が近づいているのかを垣間見ることはできる。