2014年5月3日土曜日

プーチンの思考―「強いロシア」への選択 佐藤 親賢 (著)

 3月と4月は猛烈に忙しくて、全然本を読めなかった。このままだと今年の目標200冊は厳しいカモ…。

 プーチンについて、バランスよく解説している本を探していた。北野本(プーチン 最後の聖戦)も面白かったけど、意図的というか作者の芸風なのか、あまりにも文章表現がくだけたものである上に、若干のバイアスを感じるので、岩波の本ならそんなに強烈な偏りはないだろうと思ったのが本書購入の動機。 ・ソ連崩壊後、市場経済への移行を余儀なくされた状況下で、没落のモメントが強かったロシアを立て直したのは間違いなくプーチンの功績。その過程では強権的な言論抑圧を行い、元KGBという出自もあって冷酷なイメージが強いプーチンだが、単なる権力志向の強い独裁者ということではないようだ。古き良きソ連を懐かしむ保守派への目配せを忘れず、それどころか、そこに自分の立脚点を置いて大事にしながら、改革の必要性も理解して、バランスを取りながら舵取りをしてきた、というのが著者の視点。地方の行政官だった時からクレムリンに呼ばれ、傀儡の依代としてエリツィンから禅譲を受けたが、それからはバックにいた連中を上手に処理し、経済界も強攻策を用いて制御下に置いたという辺りの経緯については北野本とも共通しているので、実際そうだったということなのだろう。

 かつてに比べると支持率も下がり、皮肉にもプーチンの政策によって拡大した中間層の支持が、よりリベラルな方向に向きつつあるらしい。そうだとしたら、国のリーダーとは何と孤独なものなのだろう。もちろん、周辺には真の理解者、協力者もいるだろうが、自分がそのために尽くしている対象からそっぽを向かれるのは切ないことだろう。もちろん、国民とはそういうものだということも分かった上で務めているのだろうし、そういう人にとって国家と国民は必ずしも同義ではないのだろうが。

 佐藤優さんは、地政学的な理由からも日ロの親交を深めるのは今が好機ということを主張しているようだが、北大スラ研の木村汎先生なんかは、プーチン政権はたそがれ時で、これから凋落だからあまり交渉を進めない方がいいなんて文章を昨年(2013年)の6月に出している。今ではもう記事が読めなくなってるので、個人的スクラップブックのリンクを掲載しておく

 独裁と民主主義ということでは「銀河英雄伝説」を避けて通ることはできないわけで(笑)、作者の田中芳樹さんもプーチンには注目しているらしいのだが、これも記事が読めなくなってるので、スクラップブックのリンクをどうぞ

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