2014年7月20日日曜日

逆境を乗り越える技術 (ワニブックスPLUS新書) 佐藤 優 (著), 石川 知裕 (著)

 帯の文句通り「精神論ではなくリアルな技術」満載。対談本なので読みやすいが、対談者が両方ともかなり高レベルの逆境に陥った当事者なので、話にリアリティがある。例えば「(支持者に)お金を頼みにいくのは、ものすごいストレス(中略)『やっぱり断られるかも』とか『下手するとお金はおろか支持をも失うかもしれない』など、悪いことを考えてしまいがちです(P145)」など。本当に逆境に陥ってから本書を読むと、「逆境に追い込まれたら、絶対環境を変える必要があります(P75)」などの文章に過剰にすがり過ぎてしまう恐れがあるので、平常時に読んでおいた方がいいかも知れない。

 個人的にもっとも響いたのは「(手で)書くことが大切」というもの。
 溜め込まずに、まずは書きだしてみることが精神衛生上もよろしい、という記述は色んな本や記事で散見してきたけど、本書ではもう一歩踏み込んで「クラウドは危ない。何でもクラウドに預けてしまうと自分で覚えない」とまで言っている。何でも預けちゃう傾向が強い自分には突き刺さりました。攻殻機動隊で「記憶の外部化を可能にした時、あなたたちはその意味を、もっと真剣に考えるべきだった」という人形使いのセリフも思い出されるな。

【目次】
第一部 逆境を生きる──陥ってしまったら

その一 うつ病とのつきあい方
うつ病と自殺/人にはそれぞれのキャパシティがある/佐藤優も五月病に悩んだ/うつ病脱出の完全成功ストーリーはないetc.

その二 組織や上司とは戦うな
組織には勝てない/対組織なら 局地戦 しかない/上司には逆らうな

その三 落ち着いて考えよ
書くことは大切/短気はダメ。ときの流れというものがある

その四 プライドにしがみつくと破滅する
プライドは捨てよ/目立たない生きかたは大切

その五 人こそは宝なり
「縁の深まる人」と「離れていく人」/荒っぽい捜査、その背景と影響

その六 譲ってはならないことを見極める
絶対に罪を認めない理由と政界の実態/説明はダメ、嘘もダメ/罪が重いほうが公民権回復が早い?etc.

特別編 逮捕されるということ

第二部 平時──逆境に備え、やっておくべきこと

その一 あらかじめ考えておきたいこと
人生の組み立て方を再考せよ/「五〇歳」はチェック・ポイント/これからも食える資格、食えなくなる資格/最恐の二極化etc.

その二 やはりお金は軽視できない
お金は大切/自分の値段/クビになったら

その三 国家は遠い存在ではない
国家と人の生命/「言語」というもの/インテリジェンス的ウクライナ情勢予測/ウクライナ新政府の正体/社会情勢は知っておかねばならないetc.

その四 いまだからこそマルクスが役に立つ
いまの経済状況の理解にはマル経が必須/給料はなぜ上がらないのか/中間組織とファシズム

その五 何を学んでおくか?
古典は学びの宝庫/上手な勉強の仕方/小説は学べる/生き残りのための読書/社会人になって学ぶ意味

その六 やはり持つべきものは 友達

そもそも友達とは?/自分も相手も負担にならない会合/人間関係に利害が絡むと……/最後は友達力etc.


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