2015年11月1日日曜日

地方消滅 創生戦略篇 (中公新書) 増田 寛也, 冨山 和彦

 著者の一人である増田氏による前著「地方消滅」が総論的なものであったのに対して、本書はかなり具体的に踏み込んだものになっている。

 本書は知事経験者である増田氏と、東北で経営者として活躍している(らしい)冨山氏との対談形式になっている。このためか、地方自治における実例や弊害についての言及が具体的で分かりやすい。例えば「必要なのは共働きで500万稼げる仕事(冨山 P37)」や、「首長が変わると議会がガラリと変わる(増田 P89)」などという発言はかなり具体的。また、悪しき平等主義のため、余裕があると「選択と集中」を実行することができない、というのもリアルなご意見。「北海道の農業は(略)可能性が開けている(増田 P49)」というのは道民としては嬉しい発言だが、あくまでも「可能性」だからね。

 中でも、例えばコンパクトシティという考え方について、日本では移住を強制できるわけではないとし、そのような強制移住ではなく、高度経済成長時代に拡散し過ぎた人口分布を適正値に戻すことによって、人口減少を前提として組み込んだ自治体の在り方を住民と共に作り上げていくというのは大事な提言であり、今後の日本の行く末をわがこととして考える時に、かなりの説得力を持つと感じた。ちなみに、コンパクトシティ政策が進んだ場合、近年顕在化している野生動物の侵食は拡大すると考えるべきだろう。

 自分にとって最も印象深かったのは増田氏の次の発言。「地方創生の戦略を考える上で、私が一番増やしたいと思っているのは、地域の大学が核になって、地域が本当に求めているニーズを汲み取り、解決する仕組みをつくることですね。(P156)」ただ、これを可能にしようと思ったら今の文科省の制御は変えていかないと実現は困難。

 実はこの本については、最近、大変お活躍(誤植じゃないよ)の増田氏が、対談形式という執筆の労を取らなくてよい形式で好きなことを放談してるんだろうということで軽視してたのだけど、対談ゆえに読みやすく、それでいて随所に二人の知見がキラリと輝いているといった印象で、自分としては読む甲斐のあった本でした。

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