原作者を除けば、仮面ライダー(昭和)といえば平山亨、アニメでは西崎義展の名前を聞くことが多い。本書は営業畑にいた渡邊亮徳を追ったもので、この名前は初めて知った。
亮徳さんがすごいのは、仮面ライダーの企画の産みの親であり、仮面の忍者赤影、ゲゲゲの鬼太郎、マジンガーZ、ゴレンジャー、キャンディキャンディと日本の特撮アニメの企画に携わり、果ては牙狼の立ち上げまでやった人ということ。仮面ライダーを生み出したのは石ノ森章太郎だが、特撮ものの新しい番組をやろうと発案し、石ノ森章太郎に声をかけたのが亮徳さん。さらに、後にスカルマンとして世にでることになるデザインを周囲と調整し、受け入れられなった後に、バッタをモチーフにしたあのデザインが出るまで石ノ森、平山と試行錯誤を行ったのもこの人なのだ。
最初に営業として「こんな番組をやろう」と発案するだけでなく、どんな世界観でいくか、とかコンセプトまで考える。また、鬼太郎やドラゴンボール、セイラームーンなどのアニメ化に際しては、発掘から周囲の説得も彼の仕事。携わった番組の数が多いこともあり、本書においては比較的淡々と彼の足跡が描かれている。
アメリカのスタン・リーとも交流が深いらしく、自分が子供の頃に放映された特撮版スパイダーマンの企画も亮徳さんなら、レオパルドンという巨大ロボの設定をアメリカ側に認めさせたのも亮徳さん。いやぁ、面白い、すごい人だ。
牙狼(今はアニメ版やってる)は、雨宮慶太が全てを創りだしたと思っていたのだけど、実はこれも亮徳さんが雨宮監督を見出して作らせた作品だったことを本書で知った。映画版ハカイダーを見て雨宮監督の才能を評価し、仮面ライダーやウルトラマンに続く新しい日本のヒーローを創造するように話を持ちかけたのも亮徳さん。黄金騎士というコンセプト、神仏を取り入れたデザインコンセプトまでが亮徳さんで、狼をモチーフにした具体的なデザインから後が雨宮監督。
ちなみに、もし、牙狼はどれを見ればいいんだと迷っている方がいたら、「暗黒魔戒騎士編」を見てから「MAKAISENKI」というのがおススメです。今、リアルタイムでやってる「牙狼 -紅蓮ノ月-」は設定も登場人物も時代までもが違う話なので、ここから入るのもアリです(余計なお世話)。
面白い作品では原作者や監督など、現場のクリエイターがクローズアップされることが多いが、スポンサーを含め、やはり多くの人が関わってこそなのだなということを本書を読んで実感した。ただ、本書はあくまでも渡邊亮徳という個人の軌跡に焦点があたっているので、業界全体での動きが分かるような作品も読んでみたい。同時代に西崎義展や徳間康快、角川春樹などの傑人も色々といたわけで、その辺りの関係性なんかまで分かると面白い。
2016年2月21日日曜日
火星にいった3人の宇宙飛行士 (RIKUYOSHA Children & YA Books) ウンベルト エーコ
今月(2016年2月)19日にウンベルト・エーコが逝去した。「薔薇の名前」の映画でしか彼のことは知らないのだけど、たまたまタイミングよく、この絵本を1ヶ月ほど前に読んでいた。実際は、そろそろエーコも読みたいけど難しそうだから絵本からアプローチしてみようと思ったのがきっかけ。
お話のプロットはタイトルの通り。3人の火星飛行士はアメリカ、ロシア、中国。最初はお互い、半目し合っているが、孤独感の中で連帯していく。そんな彼らの前に火星人が出現し、3人は団結して対峙しようとする、というお話。
同じ状況下で想起される感情が同じである時、理屈抜きで無条件で通じ合うことができ、それが相互理解を促進するということか。
絵本というのはサラッと読めてしまうのが曲者と言えば曲者。それにしても...何、この絵?子供向けの本でこの絵はかなり強烈なインパクトを与えるんじゃないかな。それを狙ってるんだろうけど。
2016年1月17日日曜日
9割のめまいは自分で治せる (中経の文庫) 新井 基洋 (著)
Geonova(知る人ぞ知る)やってた頃から、時々目まいで立ち上がれなくなることがある。もともと耳が弱点の一つで、かつては突発性難聴なんてのもやったことがあるのでそれも関連しているんじゃないかと思う。めまい外来にも行ってみたけど、どうも要領を得ない。
たまたま目にした本書。こう言っては失礼だが意外な良書でした。いや、まだ読んだばっかりなので効果は最終確定ではないんだけど、目まい用の訓練が数分でできるようなメニューで紹介されてるし、その解説や、どんな目まいに有効かというのが書かれているのもありがたかったりする。
目まい外来に行った経験者なら分かると思うけど、目まい体操みたいな手軽なリハビリ運動の図表なんかをもらう。本書も、それに似てるけど、動きの解説が分かりやすく書かれているし、症状に応じたメニューの分類があるのもよい。目まいの場合、(何に由来するかにもよるけど)完治はないから、どう付き合っていくかが大事という主張を最初にきちんとしているのも好感が持てる。
目まいで苦しんでる人がいたら、一読をおススメします。
たまたま目にした本書。こう言っては失礼だが意外な良書でした。いや、まだ読んだばっかりなので効果は最終確定ではないんだけど、目まい用の訓練が数分でできるようなメニューで紹介されてるし、その解説や、どんな目まいに有効かというのが書かれているのもありがたかったりする。
目まい外来に行った経験者なら分かると思うけど、目まい体操みたいな手軽なリハビリ運動の図表なんかをもらう。本書も、それに似てるけど、動きの解説が分かりやすく書かれているし、症状に応じたメニューの分類があるのもよい。目まいの場合、(何に由来するかにもよるけど)完治はないから、どう付き合っていくかが大事という主張を最初にきちんとしているのも好感が持てる。
目まいで苦しんでる人がいたら、一読をおススメします。
すばらしい新世界 (光文社古典新訳文庫) オルダス ハクスリー (著)
完全な管理体制が出来上がった未来の世界。人間は受胎によらず、遺伝子操作で生まれてくる。最初から社会的ヒエラルキーのどこに属するかも決定される完全な階級社会。しかも生まれた後の睡眠学習によって、自分が属する階級を素晴らしいと信じこむようにインプリンティングされるため、社会的な不満は皆無。私的所有は争いの火種となり、忌避されるためフリーセックスの世界。嫌なことやネガティブな感情が出てきたらソーマ錠という薬で多幸感を得る。
ディストピアSF小説の古典だけど、実は初めて読んだ。1932年発表だけど古臭さは皆無。体制側の理屈にはかなりの説得力がある。しかも、その管轄者が、ちゃんと文化だとか選択のある自由の代償として、この文明形態を採った根拠や思想を自覚した上できちんと選択しているというのも盤石感、ハンパねっす。でも、そんな世界は、やっぱりイヤだよねえと感じている自分の心情(信条?)ってのは、じゃあどの程度のものなのかという不安感を呼び覚まされた。
ハックスリーは「知覚の扉(未読)」なんて本も書いてるから、ディックみたいにラリった内容かとおもったけど、そういうことは全然なかった。
ディストピアSF小説の古典だけど、実は初めて読んだ。1932年発表だけど古臭さは皆無。体制側の理屈にはかなりの説得力がある。しかも、その管轄者が、ちゃんと文化だとか選択のある自由の代償として、この文明形態を採った根拠や思想を自覚した上できちんと選択しているというのも盤石感、ハンパねっす。でも、そんな世界は、やっぱりイヤだよねえと感じている自分の心情(信条?)ってのは、じゃあどの程度のものなのかという不安感を呼び覚まされた。
ハックスリーは「知覚の扉(未読)」なんて本も書いてるから、ディックみたいにラリった内容かとおもったけど、そういうことは全然なかった。
2016年1月11日月曜日
ヘッテルとフエーテル 本当に残酷なマネー版グリム童話 マネー・ヘッタ・チャン (著)
まずはタイトルが面白い。内容も童話から意匠を借りたものとなっており、主人公であるヘッテルとフエーテルに加えて、アホ・スギン・チャン、ヤンデレラなる登場人物も。何か、もう、これだけでバカバカしく面白そうでしょ?1話1話が短い寓話となっており、それらは巷間に横行する様々な詐欺的手法がテーマ。仮想通貨やマルチ商法、政府のNTT株公開の話から法律事務所の過払い金の話など。
個人的には各話の最後が「銀河英雄伝説」のパロディというその一点だけで本書が好きになった(安直)。意外にも巻末の参考文献が充実している。
個人的には各話の最後が「銀河英雄伝説」のパロディというその一点だけで本書が好きになった(安直)。意外にも巻末の参考文献が充実している。
嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え 岸見 一郎 (著), 古賀 史健 (著)
ベストセラー。読んでみたところ、衝撃の内容だった。
幼少期から漠然と感じていた、常識や一般通念に対する違和感について明瞭化してくれていたというのが大きな理由。もちろん、それまで自分にはなかった考え方を教えられた部分も大きい。
対話形式という本書の構成に、最初は戸惑いを感じていたが、いつの間にか引き込まれていたし、最後はちょっと感動までした。
いつかどこかで読んだような部分も多く、アドラー心理学ってのは、これまでに読んできた自己啓発本やらスピリチュアル本のネタでもあるのだな。ハクスリーの「すばらしい新世界」でも言及があったのには驚いた(アドラーは1937年没、「すばらしい新世界」は1932年発表)。
幼少期から漠然と感じていた、常識や一般通念に対する違和感について明瞭化してくれていたというのが大きな理由。もちろん、それまで自分にはなかった考え方を教えられた部分も大きい。
対話形式という本書の構成に、最初は戸惑いを感じていたが、いつの間にか引き込まれていたし、最後はちょっと感動までした。
いつかどこかで読んだような部分も多く、アドラー心理学ってのは、これまでに読んできた自己啓発本やらスピリチュアル本のネタでもあるのだな。ハクスリーの「すばらしい新世界」でも言及があったのには驚いた(アドラーは1937年没、「すばらしい新世界」は1932年発表)。
21世紀の自由論―「優しいリアリズム」の時代へ (NHK出版新書) 佐々木 俊尚 (著)
あれ?佐々木さんって、こんなに独断的な論調だったっけ?という印象。「レイヤー化する世界」での主張と基調は変わってない。それについては面白い視点だと思うし、同意できる部分も大きいのだが、そうなると本書の存在意義は?タイトルにある「自由論」というのが果たしてミルを意識しているのかどうかは知らないけど、総括の仕方が独断的で根拠が弱い。観念的な表現にしても、何となくわからんでもないけど、もっときちんと説明してよ、という気がする箇所が多い(「ネット共同体は水平展開だから上下関係がない」という表現など)。
帯が「佐々木俊尚の新境地!」とあるが、本書のようなおかしな書き方がデフォルトにならないよう切に願う。
帯が「佐々木俊尚の新境地!」とあるが、本書のようなおかしな書き方がデフォルトにならないよう切に願う。
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